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第64話(番外編2)二人だけの射法訓。1

「美月さんの弓道が見たいです」  日頃の礼にと美月に『おまえの望むことを何でもしてやる』、と、言われた満月は迷わずその願いを言葉にしていた。  そんな理由で二年前に叶わなかった、湾岸近くにある弓道場を貸し切り、満月と美月は二人きりの弓道デートをすることにした。  満月はこの日がとても楽しみで仕方がなかった。  日向 太陽から美月の射形は美しく完璧だと大絶賛だったため、満月も美月の弓道が見たいと思っていたのだ。  だから弓道デートを提案したのだ。  弓道着に身を包んだ美月は、長い髪を高い位置で一本に結ぶ。  美月は容姿端麗と眉目秀麗を兼ね備えた美青年、しかし中性的な雰囲気ではないし、どこからどう見ても男にしか見えないのだが、弓道着姿になると性別をも超えた美しさがあった。 「そんな露骨にジロジロ見るなよ」  美月は満月の視線に気付き、苦笑した。 「あ、ごめんなさい。美月さんの道着姿があまりにも綺麗で似合っていたので、絶句しちゃいました」  満月は思っていたことを言葉にしたのだが、その言葉に美月は一瞬空気を飲んだ。 「……おまえも俺を汚したいのか」  辛そうに呟く美月の言葉に、どう返事をしようかと思ったが、有りの侭に答えた。 「いえ、逆です。神聖すぎて、汚したいなんてとんでもない。むしろ両手を合わせて拝みたいくらいです!!」  満月は少し興奮気味で言うと、その姿に美月は笑ってくれた。 「俺は即身仏か」  笑い合いながら道場に入り、美月は息を整え精神統一をしてから、矢を持たずに弓だけを引き、そっと弦を放した。  パアン、と、乾いた弦音が静まり返った道場に心地よく響き渡る。  美月のその流れるような一連の所作に、満月は見惚れていた。  彼が想像していたよりも更にその姿は美しかった。 「今度は射る。……的から外れても笑うなよ」  美月の射形はとても綺麗だった。  日向 太陽の教えよりも更に完璧な姿で、見る者全てを魅了する、本当に神聖なものに映った。 「……やっぱり、上手くはいかないもんだな」  矢は的から外れ、美月は小さく溜息を吐いた。  その美しく完璧なはずの横顔に、ほんの少しだけ寂しげな影が差したのを、満月は見逃さなかった。

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