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第7話
「今から作戦会議だ」
一色が突然こんなことを言い出して、俺と四十万を寮の食堂に呼び出した。
とりあえず話を聞いてみようと思い、自販機で買ったカフェオレをテーブルに置いて席についた。
「怪人に拉致された柊を助けたのが、俺と柊の初対面だよな」
一色が、ダークムーン支部で俺を助けてくれたときのことを確認した。
「そうだ」
「俺の妹が行方不明なのも、怪人に拉致されたんじゃねぇかって思ってるんだ」
一色の妹が行方不明……!?そんな話は初耳だ。
「どういうことなんだ?」
「去年、妹の蒼 が行方不明になって、警察に相談したけど全く進展がねぇんだよ。これは怪人絡みの事件だと思ってる」
一色は携帯端末で妹の写真を見せてくれた。ショートヘアで活発そうな雰囲気だ。
「こいつが蒼だ。もし見つかったら教えてくれ」
陽気な一色にこんな事情があったなんて……。
自分が怪人に拉致された時のことを思い出してみると、最悪の可能性に気づいてしまった。
潜流は遺伝子ドーピングの注射で俺を怪人に変えようとしてたじゃないか。
蒼さんも同じ目に遭った可能性が高い。
一色の妹なら適性があるから異形化はしていないはずだ。
「蒼は母親が違うけど仲が良いんだ。だから心配だよ……」
ちょっと待った。
母親が違うのなら蒼さんには適性が無くて異形化してしまって、俺たちや他の生徒がすでに殺した後かもしれない。
「話してくれてありがとう。俺も蒼さんを探すよ」
「私も探します」
俺と四十万は一色を気遣ってそう言ったものの、顔を見合わせた時の四十万は複雑な表情をしていた。
手遅れの可能性を四十万も考えているんだろう。
「先月、烏の怪人と戦った時のことなんですけど……烏の怪人と一緒に男の子がいたんです」
四十万の話題にドキッとした。
烏の怪人と一緒にいた男の子は藻沼 潜流 だ。
「男の子は烏の怪人の仲間だと思います。柊さん、名前呼んでましたよね。確かモグルとかって」
「えっ、ああ……そうだったか?四十万、よく覚えてたな」
「あの男の子を知っているんですか?」
四十万の猫みたいな目が俺をじっと見ている。
一色も怪訝 な顔でこちらを見ている。
これは、なんとなく良くない流れだな。
潜流との接点は隠したいけど、名前を呼んだのを四十万に聞かれてしまったからには下手に誤魔化すと余計に不自然だ。
少しは話さなければならない。
「あいつは俺が拉致されて連れて行かれたところにいた奴だよ。潜流って呼ばれてたんだ。でもそれ以上のことは何もわからない」
本当はお互いに自己紹介をしてちょっと話をしたんだけど、それを打ち明けるとややこしくなりそうだから嘘を混ぜた。
「そのモグルって奴も怪人だな。怪人ってのは、単独で暴れてるんじゃなくてグループになってるのかもしれねぇな」
「もっと大きな組織かもしれませんね。蒼さんも監禁されているかも」
話が核心に近づいてきた。どれほどの規模の組織かはわからないが、潜流は怪人の秘密結社ダークムーンだと言っていた。
「怪人が何人いても俺がやっつけてやる。そして蒼を必ず助けるんだ」
「私も同じ気持ちです」
一色と四十万は戦う覚悟が出来ているようだ。
でも、俺は……。
携帯端末が鳴った。出動要請だ。
俺と一色と四十万……いつもの三人組で現場の街へ駆けつけると、曇天の路上でたくさんの人が倒れていた。
しかし外傷は無く、気持ち良さそうに眠っているように見える。
「あれを見てください」
四十万が指差したのは、奇妙な怪人だった。
レトロなテレビみたいな異形頭で、体は人間のスーツ姿だ。
怪人の頭部のテレビ画面に渦巻き模様が映し出されるのを見た途端、猛烈な睡魔が襲ってきた。
これはまずいと思ったけど、俺は意識を失ってしまった。
目を覚ますと、全く見覚えの無い和室の布団の上だったから慌てて起き上がった。
淡い緑色の砂壁に、日本画の掛け軸。窓から見えるのは青々とした木々。
高級旅館だろうか?一体どこなんだここは。
俺はまた拉致されてどこかに連れて行かれたのか?
しかも、いつのまにか浴衣に着替えさせられている。
「おはよう、玻璃彦 」
聞き覚えのあるこの声は……。
藻沼潜流が立っていた!
潜流のふわふわした青緑色の髪と琥珀色の瞳の鮮やかな色彩が俺の目を直撃した。
いつもの白衣もいいけど、浴衣もよく似合っていて見た目は本当にかっこいい。
でも今はそんなこと考えている場合じゃない!
「ここはどこだ!?なんでお前がここにいるんだ!」
潜流は肩をすくめて、肘を曲げたまま手のひらを上に向けるやれやれ……というようなポーズをしている。
「何言ってるんだよ、寝ぼけてるのか?僕たちは温泉旅行に来ているんじゃないか」
誰と誰が旅行だって?
「そんなのおかしいだろ。俺とお前は敵同士のはずだ」
「敵だったのは昔の話だよ」
「えっ……!?」
「今はラブラブな恋人同士だろ」
「は……!?!?」
言っていることがイマイチよくわからん。なにがどうなってこうなっているのか。
潜流は俺の混乱をよそに穏やかに微笑んでいる。こんな笑い方だったか?
何かがすごくおかしい気がする。
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