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第12話
校庭は全校生徒と氷の怪人の集団が乱闘する戦場と化した。
一色 が念力で氷の怪人をちぎっては投げちぎっては投げ、四十万 は両手から生やした刃で氷の怪人を叩き割っている。
他の生徒たちもそれぞれの異能を用いて氷の怪人と戦っている。
もちろん、俺も仕込み傘の刀で氷の怪人を叩き割ったり、氷の怪人の口から吐き出される氷の弾丸を傘で防いだりしていた。
氷の怪人の集団を一掃すると、みんな怪人への文句をブツブツ言いながら寮に帰って行った。
氷の怪人の集団を退けた次の日も寒いままだった。
原因を取り除いてはいないということだ。
朝食後に来た出動要請は海だった。
空が冴え冴えと晴れ渡っている。
海水浴場は本来なら水着姿の人々で賑わっているはずだけど、寒いせいか俺、一色、四十万以外は誰もいない。
俺たちは冬用の防寒着を着ている。
四十万はコートを着てマフラーも巻いているけど、体から刃を出す異能の都合で手袋をはめられず寒そうだ。
「おい、あれ見ろよ!」
一色が指差した海には信じられない物があった。
海上には氷で出来た西洋風の美しい城が聳 え立っていた。
氷の城からは氷の怪人たちが次々に出て来て、城と浜辺を繋ぐ氷の橋の上を行進してこちらへ向かっていた。
「一色の念力であの城を破壊出来ないのか?」
「デカすぎて無理だ」
一色の念力でも巨大な建造物を破壊するのは無理なようだ。
「柊さん、一色さん、突入しましょう!」
俺たちは橋へ近づき、怪人たちとの戦いを始めた。
怪人たちと戦いながら氷の城へ突入することになった。
怪人たちを倒して廊下を進むと、突き当たりに大きな扉があった。
「なんなんだよ、この城は……」
異様な場所に一色がドン引きしている。
「ここがきっと、氷の怪人たちの本拠地ですよ。この扉の先に親玉がいるんじゃないですか?」
四十万が氷の扉を素手で触ってしまった。
「冷たっ!」
手袋をはめた俺と一色が扉を全力で押したが、扉はびくともしない。
「一色、扉なら壊せるか?」
拉致された俺を一色が助けに来てくれた時のことを思い出して聞いてみた。
「やってみる」
一色が扉の方へ手のひらを差し出すと氷の扉にピシピシとヒビが入り、雪崩 のように崩れた。
目の前にある氷の塊を一色が念力で左右にどけて通り道を作り、俺たちは先へと進んだ。
氷の大広間の奥には氷の玉座があり、玉座にはいつぞやの白髪の青年が白いボロ布のような奇抜な服を着て座っていた。
氷の玉座で尻が冷たくないのだろうか?
「だりぃ」
足を踏み入れた俺たちを見た青年の第一声がこれだった。
青年の透明感があるアイスブルーの瞳は、俺たちを見ているようでどこも見ていないような虚ろな眼差しだ。
「あなたが氷の怪人の親玉ですか!?」
既に両手から刃を生やしている四十万の声が大広間に響き渡る。
「……そうだ」
白髪の青年はぼそりと呟き、幽霊のようにゆらりと立ち上がった。
「俺は雪見 宇印太 。怪人による世界征服を目指す、秘密結社ダークムーンの幹部。氷を操る異能だ。俺が氷の怪人で、アイスゴーレムは俺が作って操っている人形だよ。『柊 玻璃彦 を生け捕りにしろ。他の奴らは殺せ』と潜流 に言われてる。だりぃ」
雪見はいっぺんに説明した。
面倒臭がり屋で、会話をするのがだるかったと思われる。
戦う気があるのだろうか?
「こいつ、念力に抵抗してやがる!」
一色がさっきから念力による攻撃を試みているようだ。
しかし強力な怪人には念力で体をねじり切ったり潰したりという攻撃は、精神力で抵抗されてしまうと通用しないようだ。
一色の衝撃波も氷の壁で防がれてしまう。
四十万の斬撃も、雪見は氷の柱で巧みに防いでいる。
やる気が無さそうに見えて、雪見との戦いはもう始まっていた。
生け捕りにしろと命令されているなら、雪見は俺を殺そうとはしないかもしれない。
でも、迂闊に近づけば氷漬けにされるかもしれない。
俺の異能なら、擦り傷さえ負わせることが出来れば勝ち確なんだ。
でも、その擦り傷を負わせる隙を氷の怪人はなかなか見せない。
その上、大広間に雑魚のアイスゴーレムが一体入ってきた。
雪見と戦うだけでも三人がかりで手一杯なのに、一体だけだとしても雑魚まで入ってきたら大変だ。
俺がアイスゴーレムと戦おうとした瞬間、一色が念力でアイスゴーレムをフワッと空中に浮かせた。
「うおおおおおおっ!」
一色が雄叫びと共に念力でアイスゴーレムを雪見にぶん投げた。
四十万の猛攻を防ぐことに気を取られていた雪見は、飛んでくるアイスゴーレムの巨体に反応が遅れて激突した。
「やったか!?」
ようやく一撃を食らわせた一色が期待を込めてそう言ったが、その発言は大体やっていないフラグだ。
通常なら死んでいるはずだ。
普通の人間であれば。
俺たちが戦っているのは幹部クラスの怪人だ。
「いってぇ〜、お前らガチだりぃわ……」
アイスゴーレムの巨体をポイッと払い除けて雪見は立ち上がった。
頭から血を流している。
よし、これなら俺の異能で……と思って集中すると、雪見の体が氷の甲冑 で覆われて、傷を広げられなくなってしまった。
氷の甲冑で異能をガードされてしまったのだ。
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