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怪人血風伝 第15話 | 豊中晴丸の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
怪人血風伝
第15話
作者:
豊中晴丸
ビューワー設定
15 / 25
第15話
潜流
(
もぐる
)
が怪人と人間の混血なら、神機郎が企てている怪人による世界征服計画なんかに付き合う必要は無いはずだ。 「あのさ……今の仕事が潜流の意志じゃないならやらなくていいんじゃないか?お前が興味あるのは宇宙の外なんだろ」 「父がいる限りやめるのは無理だな」 「そうか……」 結局、歩み寄る糸口が掴めないまま食事を終えてしまった。 「あの……今日はごちそうさま!楽しかったよ」 悪事で儲けた金で寿司を食ったことには心の中で懺悔しながら、奢ってもらったお礼を言った。 「うん」 潜流が淡白な返事をして、携帯端末をちょっと弄っている。会計はカードで済ませていたし、なんだったんだろう? 寿司屋から出ると、見知らぬ青年が立っていた。 黒いスーツ姿で、トンネルみたいに真っ黒に見える瞳で、黒髪の長髪を束ねている。 ハンサムと言えなくはないが、得体が知れない雰囲気が上回る。 「じゃ、後はよろしく」 潜流が青年に何か任せたようだ。 「君が
玻璃彦
(
はりひこ
)
くんか。俺は
名鳩
(
なはと
)
黒逸
(
くろいつ
)
。うん、うん。よし、やるか」 俺を見て頷いている青年は
名鳩
(
なはと
)
という名前らしいが、このシチュエーションは何がなんだかさっぱりわからない……と思っていると、地面に落ちる名鳩の影がぐにゃりと動いた。 彼は敵だ。影を操る怪人だ。 潜流が携帯端末を弄っていたのは、名鳩に連絡を取って俺を捕まえるように命令したのかもしれない。 咄嗟に仕込み傘から抜刀して名鳩に突進すると、名鳩の影が生き物のように動いて地面から飛び出した。 影は名鳩の姿を覆い隠すほど大きな黒い塊となって、ぼよよんとした弾力で刃を防いだ。 何度も刀で斬ろうとしたり突こうとしたりしてみても、その都度、奇怪な影にぼよん、ぼよんと跳ね返されてしまう。 今度は影の方から体に絡みついてきて、全く身動きが取れなくなってしまった。 影から逃れようとじたばたしてみても、びくともしない。 「じゃあ、連れて行くからね」 やっぱり名鳩は俺を拉致するつもりらしい。 どうしよう!?と思ったその時。 「
柊
(
ひいらぎ
)
ー!!今助けるからな!」 「柊さん!!」
一色
(
いっしき
)
と
四十万
(
しじま
)
が走ってきた。 一色が衝撃波を出すと、名鳩がそれを防ぐために影を盾にした。 それと同時に俺を拘束していた影がほどけた。 どうやら、影は一つしか出せないらしい。 まあ誰でも自分の影は一つだが。 「三対一か、分が悪い」 そう言って名鳩は一目散に逃げ出した。 俺たちは名鳩を追いかけたが、逃げ足が速くて見失ってしまった。 「お前の帰りが遅いから心配して、位置情報サービスで探したんだよ」 「怪我は無いですか?柊さん」 一色と四十万が心配そうにしている。 「二人ともありがとう。俺は大丈夫だ。それに成果もある。
藻沼
(
もぬま
)
潜流
(
もぐる
)
にひっつき虫型GPS発信機をつけたんだ。これでダークムーン本部の場所がわかるかもしれない」 「そいつはお手柄だな!」 「すごいです!単独で藻沼潜流に接触するなんて、危険だったと思いますが……」 実は時々、潜流に会って普通に話しているなんて仲間には言えない……。 とくに妹の
蒼
(
あおい
)
さんを異形化させられた一色には。 「それより門限破っちゃったな」 急に学生寮の門限のことを思い出した。 「怪人に襲われたって言えばいいんだよ」 「帰りましょう」 夕食を既に済ませた俺は、学生寮の食堂ではカフェオレとドーナツだけ注文した。 一色と四十万は丼物をがっつり食べている。 早速、端末で潜流の居場所を確認してみた。 「潜流が隣の県にいるっ!」 「ちょっと見せてくれ」 一色に端末を取り上げられた。蒼さんの件で、ダークムーン本部の場所を早く知りたい焦りがあるのだろう。 四十万も一色の隣で食べながら端末を覗き込んでいる。 「
辺鄙
(
へんぴ
)
なところですが……怪しい建物がありますね。ここが本部なのかどうかはわかりませんが、調査する価値はありそうです」 「明日、出動要請が無ければ早速行ってみようぜ」 一色は闘志に満ちているようだ。 ついに明日が決戦になるのか?潜流と戦いたくはないけど、潜流の父親の
神機郎
(
しんきろう
)
を止めなきゃならない。 その日の夜はなかなか眠れず、ベッドの掛け布団の中に無理やり入った後もトイレに行ったり水を飲んだりして落ち着かない。 サイドテーブルの上のナイトスタンドの薄明るい光が、枕の隣に鎮座しているシマエナガのぬいぐるみをぼんやりと照らしている。 俺はベッドに横たわり、ぬいぐるみの顔を見ながら考え事をしていた。 蒼さんがいたら、とりあえず学園に連れて行くことになるだろう。 異形化をどうするかは見当もつかないけど……。 影の怪人・名鳩とはまた戦うことになりそうだ。 名鳩の影に俺の仕込み刀は通用しない。もしあいつと遭遇したら三人で戦わなければ勝ち目は無い。 潜流と神機郎の異能も不明だ。 それでも前に進まなければならない。 ……などと考えているうちにやっと眠りについた。 夢の中に潜流が出て来たけど、何も言わずに微笑んでいるだけだ。 夢の中の潜流に触れようとして手を伸ばしたが、潜流は背を向けてどこかへ歩いて行ってしまう。 「待てよっ!」 夢の中で叫んだら本当に声が出て、自分の声で目が覚めた。 窓から明るい光が差し込み、朝になっていた。
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豊中晴丸
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