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第22話

自宅(仮)の寝室のベッドの上で、俺はなかなか眠れずに天井を眺めていた。 潜流(もぐる)を探すといっても、同じ宇宙に来ているかどうかもわからない。 何か手掛かりがあればいいのに……。 そういえば、潜流が持っていたスイカ包みの中身はなんなのか。 これ以上考えてもいい考えは浮かびそうにない。 明日は、怪人退治学園に転校する前に通っていた学校へ行くしかない。 次の日。 登校すると、校門前で見知った顔の生徒たちに囲まれた。 俺が死んだことになっていたのだから、驚かれて質問攻めに遭ったのだ。 事故で意識を失ったけど、奇跡的に目覚めて、細かいところは記憶が無いと言ってごまかした。 教室に入ると、信じられないことが起きた。 「おはよう。事故、大丈夫だったのか!?」 心配そうに話しかけてくる男子生徒。 「一色(いっしき)……!?」 センターパートで長めの金髪に、鋭く力強い顔立ち。学ランではなくブレザーだが、制服を着崩しているのも同じ。 死んだはずの一色(いっしき)中黄(ちゅうき)が目の前に立っていた。 「なんだよ、(ひいらぎ)。幽霊でも見たような顔して。今のシチュエーションだとお前のほうが幽霊みてえじゃね?」 「あはは……」 どう反応していいかわからず、苦笑いするしかなかった。 彼はこっちの宇宙の一色なのだろうか。 怪人がいない世界だから怪人退治学園も存在しないし、異能を持たない一般人としてこの学校に通っているのか。 普通に話しかけてきたということは、こっちの宇宙の俺と一色も友人のようだ。 ってことは、こっちの宇宙の四十万(しじま)もいるのか?と周囲を見回してみたけど、それらしき女子生徒はいない。 怪人がいない宇宙だから、どこかで家族と平和に暮らしているのかもしれない。 蒼あおいさんは人間の姿で暮らしているだろう。 怪人がいなければ藻沼(もぬま)神機郎(しんきろう)や潜流、ダークムーンの幹部は存在しない。 だからこの宇宙に潜流が来ていても、潜流が二人ってことにはならないはずだ。 あんなの二人もいたら色んな意味で心臓に悪いし、潜流は一人でじゅうぶんだ。 午前の授業が終わり、昼食の時間。 一色は学食でカツ丼を食べている。 俺はカレーライスを食べているんだけど……。 「お前、またカレー食ってんのか」 ……と一色に言われても、こっちの俺のことは知らない。 一色も俺もどっちの宇宙でも、食べ物の好みまで同じのようだ。 それにしても、夢の中にいるような違和感だ。 転校前の学校に一色がいて、元気に飯を食っている。 いや、こっちが普通で、おかしいのは学生が異能で怪人と戦っているあっちの宇宙のほうかも。 こっちの一色を藻沼(もぬま)潜流(もぐる)というあっちから持ち込んだ問題に巻き込んではならない。 悲劇を二度と繰り返すことのないように……。 下校の時間。 一色と一緒に帰ることになった。 「こう毎日平和だとつまんねーよな。謎の敵が襲ってきて、戦うことになったら面白いのに」 一色は他の宇宙での自分の運命など知る由もないので、不謹慎なことを言いながら歩いている。 「平和なほうがありがたいだろ」 「まあそうなんだけど。いつもと違うことは柊の死ぬ死ぬ詐欺くらいなもんだ。映画や小説だと、帰ってきた人は実はそっくりな別人と入れ替わってたりするんだけどさ」 その通りなのでドキッとした。落ち着け俺。これはただの雑談だし、一色が気づいているはずはない。 「そんなことあるわけないって。どんな理屈で、そう都合良く同じ顔の人間が出てくるんだよ」 「双子ってのはシナリオが単純すぎか。クローン人間も一昔前のネタって感じがするな。後は、そうだな。パラレルワールドとか。違う世界にも、もう一人の自分がいるってやつ」 一色の奴、雑談で無意識に核心に迫ってるじゃないかっ!まぐれ当たりにしたって、これ以上話すのはヤバい気がする。 「パラレルワールドって、そんなの想像もつかないよ。あったとしてもどうやって行くのかわからないし」 やんわり否定して話を終わらせようとしたが、一色は話を広げるつもりらしい。 「そこなんだよ問題は。パラレルワールドを移動する手段なんて思いつく奴がいたらそいつは天才科学者だよ」 もうやめてくれ〜! 帰宅して、うがい、入浴、着替えなどを済ませると、どっと疲れてベッドに倒れ込んだ。 別の宇宙で、死んだはずの人間が目の前に現れて、別の宇宙の自分になりすますのは脳がバグる。 でもベッドで休んでいる場合ではない。潜流を探す方法……の前に、潜流がこの宇宙に来ているかどうか確かめる方法を探さなくては。 でも、どうすればいいのか全く思いつかない。 あまり期待はしないで、とりあえずスマホからSNSを覗いてみた。 俺のアカウントも書き込み内容もそっくりそのまま元の宇宙と同じだ。 そうだ! SNSで潜流に呼びかけてみようかな。 何もしないよりはマシだ。 「藻沼潜流、いたら返事してくれ」 早速、書き込んでみた。 5分後。 10分後。 やっぱりこんなの意味無かったかな……と思った瞬間、通知が来ていいねがついた。 相手のアカウントにはなんの書き込みも無い。 いわゆる捨て垢。 これ、藻流からなのか……!?

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