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怪人血風伝 第24話 | 豊中晴丸の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
怪人血風伝
第24話
作者:
豊中晴丸
ビューワー設定
24 / 25
第24話
潜流
(
もぐる
)
は手の平サイズの透明なアクリルブロックのような謎の機械をポケットから取り出して、操作しながら話している。 「マルチバース移動装置はどんな宇宙へ行くことになるかわからない。モヌマサウルスの卵を作って持ち込んだのは、退屈な宇宙に辿り着いた時に破壊するためさ。怪人がいなくて人間だけの宇宙なんか、前より退屈じゃないか。こんな宇宙いらない」 「自分が退屈だからって宇宙を破壊しちゃダメだよ!」 「なんでだよ」 「他の宇宙の人たちにも生活があって、大切な人がいるんだぞ。潜流の気分で破壊していいわけないだろ」 「そんなの知らないよ。ああ、そうだ。一つ聞きたいんだけど。
玻璃彦
(
はりひこ
)
、君はどうやってモヌマサウルスを倒したの?治癒とは違う異能を使ったな」 「増悪の異能で傷を広げたんだ。傷を操る異能で、治すことも悪化させることも出来る」 「それは興味深い。やっぱり君は貴重な被験者だ」 潜流は目をキラキラ輝かせている。 「潜流の異能も教えてくれよ」 「君には一度助けられた借りもあるし、教えてもいいか。悪運の異能だよ」 「悪運の異能!?」 「悪いことをしても報いを受けない運。それが僕の異能なのさ。戦闘には向かないし、自分から何か出来るっていうわけじゃないけど、殺されることは無いし、痛い目には遭わないってわけ。寿命は薬で不老不死になっているし、僕が最強の怪人だってことがわかったかい?」 潜流は不老不死の薬を飲んで老化と寿命による死を防ぎ、病気や物理的な死は悪運の異能で防いでいたのか! それなら無敵ってことになるけど……。 潜流にただ一人だけ勝てる人物は、無効化の異能を持つ彼の父親だけだった。 潜流は
四十万
(
しじま
)
に斬られて怪我をしていた。 怪我しないってことはないらしい。 でも、結局は助かった。 それは潜流の異能ではなく俺の異能で傷を治したからだったはずだ。 俺が潜流の傷を治したのは、認めるにはものすごく罪悪感があるけど、好きだからで……。 俺が潜流を好きになったこと、その前に潜流と出会ったこと自体が、まるごと潜流の悪運なのか……!? いや、まさか……でも、そんな……。 「そのアクリルブロックみたいな物はなんだ?」 考えがまとまらなかった俺は、目の前の謎の物体に話題を変えた。 「元の宇宙に帰るための機械だよ。移動先の宇宙が気に入らなかったらいつでも帰れるようにしてある」 「それなら破壊なんかしないですぐ帰ればいいだろ」 「僕が気に入らない宇宙は消えてほしい。宇宙に限らず僕が気に入らないものはみんな消えてほしいんだ。だから今まで可能な限り消してきた。お前だって部屋に虫が入ってきたら殺すだろ。僕にとっては人間も宇宙もその程度のものなんだよっ!!」 「なんてワガママなんだ」 潜流の凶行を止めるにはどうしたらいいんだ……!? 「もう僕、帰るからね」 潜流は俺の手を握って機械を作動させようとしている。ちょっとドキッとした。 「なんで手を握るの?」 「一緒に元の宇宙に帰るためにはこうしなきゃならないんだ。被験者を失うわけにはいかないし」 「でも、俺が帰ったらこっちの宇宙の両親はどうなるんだ?厳密に言うと両親じゃないけど……」 「そんなもんほっとけよ。そっくりなだけの別人なんだから」 そうは言っても、こっちの俺は死んでいて、彼らはこっちの俺が生きていたと思い込んで喜んでいるんだ。 こっちの
一色
(
いっしき
)
だってそうだ。 俺がこの宇宙からいなくなったら、彼らをまた悲しませることになってしまうんじゃないか? 「そんなにこっちの両親モドキを置き去りにすることが気になるなら、いっそのこと僕が殺してあげようか?」 「絶対ダメだ!!」 「だったらおとなしく帰るんだな」 俺がこの宇宙にいたら、それだけで彼らを潜流のことに巻き込んでしまう。 俺は元の宇宙に帰るべきだ。 離れることが彼らを守ることだ。 潜流と手を繋いだまま周囲の空間がぐにゃっと歪み、気がつくとベッドの上だった。 「ここは……」 見知らぬ部屋。 藻沼もぬま製薬研究センターに似た未来的なインテリアだ。 すぐ隣に人の気配を感じた。 隣には潜流が寝そべっていた。 「うわあああ!?」 俺は飛び起きて叫んでしまった。 「無事、元の宇宙に帰れたようだね」 潜流がゆっくりと身を起こす。 「ここ、どこなんだ!?」 「ダークムーンアメリカ支部だよ。ダークムーンは世界中に支部があるんだよね。本部は
玻璃彦
(
はりひこ
)
が救援要請を出したから今頃は怪人退治学園の連中がいるだろうし、支部に帰ることにしたんだ」 「アメリカ〜!?」 潜流にとっては支部の一つに帰っただけなんだろうけど、俺は遠い異国の地に連れて来られてしまった。 「僕、ちょっと困ってるんだけど」 「何が?」 「マルチバースを旅していると、君で人体実験する暇が無いだろ。貴重な被験者に逃げられたら困るから、マルチバースを移動する時は君も一緒に連れて行くことにしたよ」 な、なんだって〜!? でも、潜流は理想の宇宙を探しているんだから、理想の宇宙が見つかればそこに引っ越して穏やかに暮らしてくれるかもしれない。 今の俺に出来ることは潜流のマルチバース移動に毎回ついて行って、潜流が気に入らない宇宙だった時に破壊しようとするのを阻止することだ。
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豊中晴丸
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