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第4話

 ――なんか、ここに来ると嫌な思い出が蘇るな……。  兄が獣化し、隔離入院させられた時のこと。  ただ兄を預けるだけでも心苦しかったのに、一ヶ月以上待っても兄はヴァルハラに帰ってこなかった。  それで心配になってこっそり潜入した際、複数の兄(正確には兄そっくりに作られたコピー)に襲われ、やりたい放題に犯された。  後に実験のために兄のコピーが作られていたことが判明したのだが、グロアが自害してしまった以上コピーを生かしておいても意味がないため、結局全員廃棄となってしまった。  例えコピーだとわかっていても、兄と全く同じ造形の生き物を手にかけるのは心にくるものがあり、全てが終わった後、アクセルは泣きながら家の裏にコピーの墓を建ててやったものだ。  そういう苦い記憶があるから、どうもこの施設に嫌悪感を抱いてしまう。  さすがにあんな実験は行われていないと信じたいが、こういった隔離施設では中で何が行われているかわかりにくい。またおかしなことに巻き込まれたら……という不安がどうしても拭えない。 「おや、お見舞いですか?」  鉄門の前で立ち尽くしていたら、白衣を着た男性に声をかけられた。すらりと背の高い金髪の美人だ。ちょっと兄に似ているかもしれない。  ……似ているだけで、コピーとかではないけれど。 「いえ、お見舞いじゃなくて。うちの弟を看てもらいたいんです」  兄・フレインがこちらの両肩を掴み、貢ぎ物のように示してみせる。  するとその男性は、納得したように微笑んできた。 「ああ、診察でしたか。ではこちらにどうぞ」  鉄門の脇にあるくぐり戸の鍵を開け、中に入れてくれる。  そのまま案内に従って建物内に入り、とある部屋に通された。そこはごく一般的な診察室のようだった。  ちなみに案内してくれた男性はヴァーリというアース神らしく、バルドルに頼まれてグロアの後をそっくり引き継いだのだそうだ。  ちなみにグロアの実験のことは何一つ知らず、今は純粋な医療機関として運営しているらしい。少なくとも、本人はそう言っていた。  ――バルドル様に頼まれているなら、大丈夫だと思いたいけど……一応、油断はしないでおくか。  少し身構えていたら、早速ヴァーリにチェックボードとペンを渡された。 「まずはこちらの質問に答えていただけますか?」  どうやら問診票のようだった。  朝寝坊したことがありますか。ご飯を食べ過ぎたことはありますか。興奮が収まらなかったことはありますか。それはいつ頃のことですか……等の質問がズラッと並んでいる。  とりあえずわかる範囲で正直に回答してみた。

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