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第5話

 次に血液検査の名目で、左腕から採血された。  上腕をキツく縛られた上で細い注射器をプスッと刺され、必要量まで血を採られる。  ――こんな丁寧なことしなくても、血なんていくらでも出せるんだけどな……。  普段どれだけ斬られていると思っているのか。細い針一本なんて怖くないし、痛いとも思わない。何ならこの場で自ら腕を切り落としてもいいくらいだ。  まあ、こんなことを考えているところからして、一般人よりだいぶ物騒なのは自覚している。「腕を切り落としてもいい」だなんて、すぐ治せるとわかっているから言える台詞だ。  逆に言えば、それだけヴァルハラに染まってしまったということに他ならない。  ――そういえば俺、ヴァルハラに来てから何年経ったんだろうな……。  自分も周りもみんな歳をとらないので、どうも月日の経過に疎くなりがちだ。まだ二、三年くらいだろうと思っていたら、とっくに十年以上経っていたということも起こり得る。  アクセル自身もさすがにもう新人ではないし、ヴァルハラでそれなりの年月を過ごしてきた。よくも悪くも、本当にいろいろなことを経験した。  だから、気付かないうちに獣化している場合もあるのかもしれない……。 「結果が出ましたよ」  数枚の紙を眺めながら、ヴァーリが教えてくれた。  結論からいうと、やはりアクセルは「獣化」しているようだった。 「しかもそこそこ進んでいますね。程度でいうなら『中程度』でしょうか」 「えっ? 中程度……?」 「ええ、少なくとも軽度ではありません。もう少し早く来てくれれば、治療も短くて済んだのですが……」 「…………」 「とはいえ、手遅れではないので普通の入院で治りますよ。頑張りましょうね」  優しく励まされたが、思った以上のショックでしばらく二の句が継げなかった。  ――俺が中程度? 嘘だろ……?  何なら今日だって、数時間寝坊してご飯をいつもよりたくさん食べただけだ。  以前の兄みたいに――食欲が我慢できなくて自分の腕を切り落としたり、猛烈に眠くなって食事中に寝落ちしたり等、そんなことは起きていない。  獣化判定されても軽度だろうと思っていたので、なおさらショックだった。何かの間違いじゃないのか。

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