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第6話

「あの……失礼ですけど、それ本当に合ってるんですか? 昨日の今日でいきなり中程度なんて、信じられないんですが……」 「確かにレアケースではありますね。ただ、あなたは体質的に『閾値(いきち)』が高いみたいで。獣化が進行していても、軽度の段階では症状が出にくいようなのです」 「え……?」 「あと、獣化への抵抗力も高いです。アクセルさんは、かなり理性的な性格をしているようですので。そういう方は三大欲求も我慢できることが多くて、獣化の症状が表に出にくいんですよ」 「は、はあ……そうなんですか……」  理性的な性格がどうかはわからないが、普通に生活していて三大欲求に振り回されたことは滅多にない。食欲や睡眠欲はどうにでもなるし、性欲も――兄に乗せられることが多いだけで、アクセル自身はそれほど困っていない。  そういう意味では、三大欲求の我慢はさほど難しくないと言える。 「ということは、一般的な中程度の患者より治療も短くて済むってことでは?」  唐突に、兄がヴァーリに質問する。 「獣化って、要は三大欲求を理性で抑えられれば治療完了になるんですもんね? つまり、我慢強い子の方が治療もスムーズに進むってことではないですか?」 「ええ、その可能性は高いですね。もちろん、本人のやる気に左右されますが……」 「わかりました。そういうことでしたら、今日このまま入院させます」 「えっ!?」  そんなことを言い出した兄に、アクセルは愕然と目を向けた。  ヴァーリもやや目を丸くし、首をかしげて言う。 「今日このままですか? 部屋は余っていますので、手続きは可能ですけど」 「なら、それでお願いします。必要な着替えなどは後で届けますので」 「ちょ、ちょっと待ってくれ兄上。俺のことなんだから、勝手に話を進めないでくれよ」  さすがに抗議したのだが、兄は少し厳しい目つきで(たしな)めてきた。 「お前、ヴァーリ様の話聞いてた? 中程度なんだよ? あと少し遅かったら重度になってたかもしれないんだ。もたもたしている時間はないね」 「それはそうだけど、俺にだって準備ってものが……」 「だから、必要なものは私が届けてあげるってば。こっちのことはいいから、お前は早く治療に入りなさい。その方が結果的に入院期間も短くて済むんだから」 「……でも……」 「でもじゃないの。何を迷ってるのか知らないけど、私はお前が破魂されるなんて絶対御免だからね。今までいろんなことを乗り越えてきたのに、くだらないことで破魂とか冗談じゃないよ」 「…………」  そう言われ、アクセルは言葉を失った。

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