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第9話

 ちょっと泣きそうになって、アクセルは首を振った。  気を取り直して図書室を探していたところ、それと思しき部屋を見つけた。壁沿いに本棚がズラリと並んでおり、様々なジャンルの本が揃っている。そういえば以前ここに忍び込んだ時、ミューがいかがわしい本を見つけてはしゃいでいたものだ。  ――ミューって本当は何歳なんだろ。見た目は俺よりずっと年下なのに、謎だ……。  アダルト系の本が欲しいわけではないので、とりあえず何かしらの小説を探そう……と本棚を見て回る。  歴史書や資料集、啓発本のコーナーを通り過ぎ、絵本や小説が並んでいる本棚に踏み込んだ。  意外なことに、そこには先客がいた。 「あれ……?」  柔らかな金髪に青い瞳。背丈はアクセルと同じくらいで、目鼻立ちは綺麗に整っている。華やかな美貌はヴァルハラでも「美人だ」と評判で、アクセル自身も幼い頃からずっと憧れてきたものだ。  服装は違うが、どこをどう見ても兄本人だった。 「兄上? こんなところで何してるんだ?」 「……え?」 「さっきヴァルハラに帰ってたよな? もしかして荷物を届けにきてくれたのか? それなら部屋まで来てくれればよかったのに」 「あ……ええと……」 「というか、お見舞いってOKになったんだっけ? 以前はお見舞いも差し入れもダメだったけど、ルール緩くなってよかったな」 「あの……ちょっと待って」  兄が軽く手を上げ、こちらの言葉を遮ってくる。  何かと思って兄の手のひらを見たら、あまりの衝撃に頭を殴られたかと思った。  彼の手には、本来あるべき豆や胼胝(たこ)が一切なかった。明らかに戦士の手ではなかった。見た目は兄そっくりなのに、兄本人ではない。 「まさか……まさか、あなたは……」  それ以上は言葉にならなかった。  兄らしき人物は、曖昧な顔をしたまま何も言わなかった。 「ちょっと来てくれ!」 「えっ? 何を……」  アクセルは彼の手首を掴んで図書室を飛び出した。  彼が戸惑うのも構わず、診察室に駆け込んでヴァーリを問い詰める。 「ヴァーリ様! これは一体どういうことですか!? あなた、変な実験はしてないって言ったじゃないですか!」 「アクセルさん、落ち着いてください。少し冷静になりましょう」 「冷静になれるわけないでしょう! こんな……まだ兄のコピーが作られていたなんて」 「違うよ、僕はただの生き残りだ」  そこで初めて、兄そっくりの人物が口を開いた。

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