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第10話
「他の個体はみんな処分されたけど、僕だけ処分し損ねていたみたいで……。それで『今更処分するのもどうか』って話になって、ここで働かせてもらっているんだ」
「え……。そう、なんですか……?」
ヴァーリの様子も窺ってみたら、彼も静かに頷いて言った。
「グロアが地下でおかしな実験を続けていたことは聞いていました。それで私がここを引き継ぐ時、実験室を改めたんです。そうしたら、部屋の隅でカプセルに入ったままの個体を発見しまして」
「…………」
「迷いましたが、彼自身に罪はないですからね。施設で慎ましくしているのであれば処分する必要もないかと思い……それで、スタッフとして働いてもらうことにしたんです」
「そ、そうなんですか……? 本当に、変な実験をしていたわけじゃないんですね?」
「していませんよ。嘘だと思うなら、元実験室に行ってみては?」
半信半疑で教えられた地下室に行ってみたのだが、そこは既に倉庫になっていた。
物置きのように雑然としているわけではなく、引き出しや棚が綺麗に並べられており、どこに何があるのか誰でもわかるようになっている。
「……納得できた?」
一緒に来てくれた兄(のコピー)が、こちらの様子を窺ってきた。
「この施設にはもう、怪しい実験室みたいな場所はないよ。本当にごく普通の入院施設なんだ。だから安心して」
「そう、みたいだな……。勝手に早とちりして、すまなかった」
「いいよ。僕としては、きみに会えてラッキーだったし」
「ラッキー?」
「僕の元になった人……フレインだっけ? その人は弟を溺愛してるって聞いていたから、どんな人なのかなぁと思ってて。さすがにオリジナルと対面するわけにはいかないけど、弟になら会ってみたいじゃない」
「はあ、なるほど」
「これからしばらく入院になるだろうけど、何か困ったことがあったらいつでも言ってね。自由時間の時は、時々話しかけてくれると嬉しいな」
「ああ……わかった」
とりあえず一旦戻ろうということで、アクセルは地下の倉庫を後にした。
図書室に戻り、オススメだという小説を何冊か借りて自分の部屋に戻ろうとする。
彼はまだ仕事があるというので、図書室に残ることになった。
「ところで、あなたの名前は?」
「えっ?」
「正式名称じゃなくてもいい。ここではどんな風に呼ばれているか、そういうのがあったら教えてくれ」
そう言ったら、彼は少し驚いたような顔になった。
だがすぐににこりと微笑むと、素直にこう教えてくれた。
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