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第11話
「ナインだよ。九番目のコピーだったから、そう呼ばれているんだ」
「そうか。じゃあ俺も今後はそう呼ばせてもらうよ」
「うん、よろしく。……でも、ちょっと意外だな」
「意外? 何がだ?」
「アクセルって、お兄さん大好きだよね? コピーを造られて怒ってたし、僕のことも毛嫌いするのかと思ってた」
ああ、そういう考え方もあるのか。愛する人の複製 なんてけしからん、偽物は全て敵だ……みたいな。
――まあ、兄上だったらそんな風に思うかもしれないな。
何せ兄は、見た目にそぐわずかなり過激な性格をしている。アクセルのコピーなんかを造られた日には、コピーごと嫌悪して関係者全員を血祭りに上げるに違いない。
だが、アクセルの考えはちょっと違っていた。
「ヴァーリ様も仰ってたけど、あなたに罪はないだろ。むしろ勝手に造られた『被害者』だと思ってる。俺が嫌っているのはこんな実験をしたグロアであって、あなたではないよ」
「そう……? だとしたらありがたいけど、お兄さんそっくりの人物を前にして、よく平気でいられるね」
「平気も何も、あなたと兄上は全く別の人間だし……。最初はちょっと間違えたけど、こうして接しているとやっぱり兄上とは違うなって思えるよ。うちの兄は、図書室の蔵書を整理するなんて面倒な仕事はやってくれないもんな」
そう言ったら、ナインは少し目を丸くした。
アクセルは続けた。
「例え兄上に似ていたとしても、あなたはあなただ。造られた存在だろうが何だろうが、幸せになる権利はある。……というかそんなこと言ったら、俺だってある意味造られた存在だしな」
「え、そうなの?」
「まあ……うん。その辺は複雑だから省くけど……とにかく俺としては、あなたはあなたとして幸せになって欲しい。コピーだからダメだとか、そんなこと言うつもりはないから」
「…………」
ナインは眩しいものでも見るかのように、少しの間目を細めていた。
やがてふいと視線を外し、呟くようにこんなことを言う。
「なんか……きみがオリジナルに溺愛されるのもわかる気がする」
「えっ……?」
「いや、何でもない。早く獣化が治るといいね」
「ああ、ありがとう」
アクセルは借りた本を抱え、自分の部屋に戻った。
最初はちょっと不安だったが、この感じなら獣化の治療も頑張れるような気がした。
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