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第12話(ナイン目線)

 蔵書の点検を再開し、ある程度整理したところでナインはヴァーリに報告に行った。 「本日は娯楽用の蔵書を点検しておきました。古くなってページが分離している本がいくつか見受けられましたので、後で修理しておきます」 「ご苦労様でした。今日のところはこれで結構ですよ」 「はい」  素直に返事をし、ナインは部屋を立ち去ろうとした。  仕事が終わった後は、ささやかな自由時間が得られる。もっとも施設外に出ることはできないので、お気に入りの本を読んだり修理したりするくらいしかないのだが。 「ところで、どうでした?」  ヴァーリに声をかけられ、ナインは肩越しに振り返った。 「……どう、とは?」 「会話したんでしょう? オリジナルの弟と」 「……!」 「あなた、ずっと興味を持っていましたもんね。生きているうちに会う機会が得られたのは、ある意味僥倖だったのでは?」 「ええ……そう、ですね……」  ナインは曖昧に微笑んだ。  正直なところ、本当に僥倖だったかどうかはわからない。もしかしたら、会わない方がよかったんじゃないかとさえ思っている。  ――だって僕、もうすぐ死んじゃうしな……。  コピーとして造られたせいか、ナインは目覚めた時から寿命が短かった。おそらく今の時点で、残された時間はあと一ヶ月もないだろう。  ヴァーリはそれを知っていたから、「せめて最期くらいはそれらしい生活をさせてあげよう」という情けをかけてくれたのだと思う。  とはいえ、その情けが正解だったのかは何とも言えないところだ。  ――もう、とっくに覚悟はできてたはずなのにね。今更ながら、未練ができちゃいそう……。  オリジナルの弟――アクセルはとてもいい子だった。美形で思いやりがあって、当たり前の常識や倫理観も持ち合わせている人だった。  何よりコピーの自分にも優しくて、「あなたはあなたとして幸せになって欲しい」なんて言ってくれる。そんな言葉をかけられたら、持ってはいけない感情が芽生えてきそうだ。  そういう意味では、アクセルに会ったのは失敗だったかもしれない。 「では、明日からは患者のサポートに回ってください。今は患者の人数も少ないので、あなたは主にアクセルの面倒を見てあげてくださいね」 「えっ……?」  そうヴァーリに言われ、ナインは目をみはった。まさかヴァーリ直々に「アクセルに関われ」と言われるとは思わなかったのだ。 「……いいんですか? それでちゃんと治療できるんでしょうか」 「さて、どうでしょう。兄のコピーに励まされて頑張れるか、それとも気が散って集中できなくなるかは、アクセル次第です」 「そんな無責任な……」 「ただ、一ヶ月以内に何とかしないとあなたの死に目に会わせることになる。それだけは確実ですね」 「……!」  ハッキリ口に出され、その事実を再認識する。  そうか、あまりのんびりしている時間はないのか。自分自身も、完治したアクセルを見られなくなる。  それは……ちょっと嫌かもしれない。

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