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第13話(ナイン視点)

「わかりました。彼の治療を全力でサポートいたします」 「ええ、よろしくお願いしますね」  スケジュールはこちらです……と、薄い冊子を渡される。それに従って治療をしていけということか。まずは食欲、次に睡眠欲、最後に性欲……と。  ――食欲と睡眠欲はともかく、最後の性欲は……うーん……。  少々気掛かりだが、やるしかない。  ナインは一礼し、ヴァーリの元を去った。  自分の部屋に戻り、ふと壁にかかっていた鏡を見つめる。自分の顔は、オリジナルのフレインと同じ造形だ。  ――姿かたちは同じでも、やっぱりオリジナルとは違うんだよね……。  それはアクセルも言っていた。「あなたと兄上は全く別の人間だ」と。  ナイン自身も今更オリジナルになり替わろうなんて思っていないし、なれるとも思わない。積み重ねてきた戦闘経験がまるで違う。  ただそれとは別に、もう少し時間をくれてもいいのではないかとも思う。  オリジナルはヴァルハラで半永久的に生きられるのに、何故自分の命はあとわずかなのだろう。世界はもっと広いはずなのに、何故自分は施設の中だけでしか生きられないのだろう。  そんなの、あまりに不公平じゃないか……。  ――ダメだな。さっきから余計なことばかり考えてる……。  ひとつ願いが叶うと、どんどん際限なく欲求が膨らんでしまう。  アクセルみたいな弟が欲しいとか、彼と一緒にどこか遠くへ旅に出たいとか、買い物をしたいとか、料理をしたいとか、ついそんなことを思ってしまう。  ……そんなこと、叶うはずないのに。  ――まあ、しばらくアクセルが入院しているのは事実なんだ。その間くらいは、兄弟っぽいことをさせてもらうさ。  鏡の中の自分に苦笑しながら、ナインは再び冊子を開いた。  そして明日からの治療プログラムを頭に入れつつ、夜まで過ごした。

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