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第15話

 ――いや、ぶっちゃけ自慰はほとんどやったことないんだよな……。  正確には、やったことはあるが上手く発散できなかった、というところか。  アクセルが性的なことに及ぶのは、ほとんどが兄に仕掛けられてのことだ。なので、溜まって発散するという機会がそもそも少ない。  兄から与えられる強烈な刺激に慣れ過ぎているせいで、自分一人では到底満足できないというのもある。  ――もし抑制剤でも抑えられなかったら、どうしよう……。施設内に兄上を呼ぶわけにもいかないし……。  チラリ、とナインの様子を見る。  性格や能力はともかく、見た目は兄そっくりだ。兄の身体をそのままコピーされているから、男性器も兄と同じなんだろう。  そういえば、以前施設に潜入した時は、兄そっくりのコピーたちにさんざんマワされたものだ。形としてはレイプだったが、欲望の形が兄と同じだったため、アクセルの身体は特に違和感なくそれを受け入れてしまった。  それならナインのものも、その気になれば自分の身体に馴染むということに……。  ――って、何考えてるんだ俺は! そんなの浮気だろ! 絶対駄目だ!  普段は兄に「浮気するな!」って言っているくせに、自分は入院中に浮気するなど言語道断である。あり得ない。  ぶんぶんと頭を振り、邪な考えを追い払う。そしてごまかすようにナインに笑いかけた。 「まあ、何とかなるだろ。もしそういう時期が来たとしても、俺は薬だけで抑えられると思う。心配はいらないぞ」 「そう? ならよかった。何か気になることがあったら、遠慮なく言ってね」 「気になることというか、ここでの食事っていつもメニュー決まってるのか?」 「あれ、少なかった? でも今はあくまで獣化の治療中だから、腹八分目で我慢するのが基本なんだよ。増量はできないんだ、ごめんね」 「いや、量は問題ないんだ。ただ、味付けが独特というか……」 「独特?」 「今日の朝食の玉子焼き、甘いと思っていたのにしょっぱかったりな。いや、美味しかったけどさ」  そう言ったらナインは少し首をかしげた後、合点がいったように「ああ」と微笑んできた。 「あれは出汁巻き玉子だよ。玉子焼きの卵液を作る時に、出汁を加えているんだ」 「出汁を? だからしょっぱく感じたのか」 「そうだね。逆に僕は、甘い玉子焼きは食べたことないな。アクセルの家では、玉子焼きはいつも甘いの?」 「ああ。といっても、朝は目玉焼きやスクランブルエッグにすることが多いから、そもそも玉子焼きを作る機会が少ないんだけどな」 「そうなんだ? アクセルの甘い玉子焼き、いつか食べてみたいな」 「うちの玉子焼きでいいなら、今度作って持ってくるよ。退院した後にでも」  するとナインは、嬉しそうに笑って言った。

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