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第16話

「ほんと? ありがとう。じゃあ早く治療を終わらせないとね」 「ああ、そうだな」 「あと何日か様子を見て、食欲と睡眠に問題がなければ性欲の治療に入ろうか。といっても、いつも通り薬飲んで過ごして経過観察するだけだけど」 「わかった」  頷き、もらったタオルと水を空いているベンチに置くと、アクセルはまた走り込みを再開した。  入院中だからといって、鍛錬を疎かにするわけにはいかない。退院後に体力が落ちていたら大変だ。  広場を五周したところで少し息が上がってきたので、早歩きでまた五周する。  イイ感じに身体が燃えてきたところで一休みしようと、ベンチに近寄った。  ベンチには未だにナインが腰掛けていて、穏やかな目でこちらを見ている。 「? どうかしたのか? まだ俺に何か用が……」 「いや、アクセルを見てるだけだよ。患者の観察も仕事のうちだからね」 「ああ、そういうことか……」 「僕のことは気にせず、アクセルは自由に鍛錬続けて。あ、水が欲しかったら新しいの持ってくるよ」  そう言われたので、アクセルはふと顎に手を当てた。  水はいくらあっても構わないが、どうせならいつも鍛錬中に飲んでいたものを飲みたくなった。 「じゃあ、ひとつリクエストしたいんだけど、いいか?」 「うん、なに?」 「水にレモンとハチミツを適量加えて、少し甘酸っぱい味をつけて欲しいんだ。そっちの方が、普通の水より水分がぐんぐん沁み込んでいく感じがするんだよな」 「なるほど。ハチミツレモンってやつかな」 「ああ。もちろん食欲の治療に引っ掛かるっていうなら、却下してくれていいけど」 「いや、大丈夫だよ。作ってくるから、レモンとハチミツの分量教えてくれる?」 「……え、分量? それは結構適当なんだが……」 「適当かぁ……。じゃあ僕も適当に作ってくるかな。もし味が違っちゃっても、ご愛敬ってことにしてね」  そう笑い、ナインは施設に戻っていった。  そのまま汗を拭いつつ、軽いストレッチをしながら待っていたら、ナインは大きなピッチャーを抱えて戻ってきた。  その中にはハチミツ入りレモン水と思しき液体が、たっぷり入っている。 「ず、随分たくさん作ったな……。結構手間かかったんじゃないか?」 「いや、たくさんできちゃったのは偶然。分量をいろいろ考えながら足して薄めて……を繰り返してたら、なんか多くなっちゃった」 「そ、そうか……」 「でも、おかげで味はキマったよ。ちょっと飲んでみてくれる?」  ナインがコップに作りたてのレモン水を注ぎ、こちらに渡してくれる。

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