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第20話
「ねえ、本当に大丈夫なの? 上手く抑えられないなら、僕もお手伝いするよ?」
「だ、大丈夫だ! 一人で何とかするから、ナインは心配しないでくれ!」
「その台詞、聞くの五回目なんだけど……」
「いや、本当に! これくらいどうにでもなるから!」
「でも、どう見ても大丈夫じゃなさそうだよ? このままじゃいつまで経っても退院できないし、やっぱり僕がお手伝いした方が……」
「そ、それだけは駄目だ! そんなことしたら浮気になる!」
アクセルは大慌てで断りを入れた。
――他の人でも駄目だけど、ナインが相手なのはもっと駄目だ……! 途中で兄上と区別がつかなくなる……!
性格は違っても、外見は兄・フレインそのものなのだ。
兄と同じ調子で快感を与えられたら「もうどっちでもいいや」となりそうだし、挙句の果てには間違えて「兄上」と呼んでしまいそうだ。そんなのは兄にもナインにも失礼だし、事が終わった後で自分自身を許せなくなるだろう。
というか、いくら治療のためでも赤の他人に抜いてもらうのは恥ずかしいし、嫌だ。
兄相手でも未だに恥ずかしいのに、出会って一週間くらいしか経っていない相手にそんな醜態は晒せない。
だから今回ばかりは、自力で何とかするしかないのだ。
「アクセルが気にしてることもわかるけどさ……」
するとナインは、少し眉を顰めて言った。
「もっと気楽に考えようよ。アクセルはラブシーンを演じている既婚の俳優さんを見て、『浮気してる!』って怒るのかい? 仕事で相手とハグしたりキスしたりしてるだけなのに、『浮気するな!』って責めるの?」
「そ、それは……」
「心が傾いているならともかく、僕がやろうとしてるのはただの治療だよ? そこまで深刻に考えなくていいと思うけど」
「でも、やっぱり、その……」
「それに、性欲がずっと治らなくていつまでも入院しっぱなしなのも困るでしょ。早くヴァルハラに帰らないと、それこそフレインに浮気されちゃうんじゃないの?」
「うっ……」
違う意味でぎくっ、となり言葉を失う。
――そうなんだよな……。「兄上なら大丈夫」って安心できないところが、何とも……。
何せ、自分が一晩棺で寝ていただけで自宅に元カレを連れ込んで食事をするような人だ。
そのことについてはさんざん喧嘩してきたから、今ではあまり浮気もしなくなったものの、前科がある分、全面的に大丈夫とは言い切れない。
元々寂しがり屋で人の温もりに飢えているから、長期間の留守番にも限界があるだろう。
だからこそ、一刻も早く獣化を治さないといけないのだが……。
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