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第24話(ナイン視点)
――アクセル、大丈夫かな……。
報告書を書きながら、ナインは少し手を止めた。
アクセルの治療は、ある意味予定通り進んでいる。食欲・睡眠に関しては元から心配していなかったから、そこまではスムーズにいくだろうと思っていた。
問題は性欲である。
初めて言葉を交わした時から思っていたが、彼はかなりフレイン に愛されて育ったようだ。そして、それと同じくらいオリジナルを愛している。
しかもただの仲良し兄弟というわけではなく、恋人のように愛し合っているようなのだ。
これはもしかしたら性欲方面もオリジナルに面倒を見てもらっているのでは……と思ったが、案の定その予想は当たってしまったようだ。
自慰も苦手なようだし、大人の玩具も慣れていないようだったから、普段はオリジナルに直接可愛がられているのだろう。
そんな人が、一人で性欲を抑えられるのだろうか。オリジナルに気持ちよくしてもらうのが当たり前で生活している人が、上手くやれるとは思えない。
――そうなったら、僕がお手伝いしないといけないわけだけど……アクセル、絶対拒むだろうなぁ……。
はぁ……と小さく溜息をつく。
いくら治療のためだと言い聞かせても、アクセル本人は「浮気になるから嫌だ」とごねてくる。このまま放置するわけにはいかないのに、頑なにこちらの手を借りようとしない。
ある意味とても純粋だし、それだけ真剣にオリジナルを愛しているという証拠だ。
とはいえ、事ここに至っては、それが致命傷になりかねない。このままではアクセルはずっと退院できず、最悪の場合「治療不可」と判断され破魂されてしまうかもしれないのだ。
そんな結末は、誰も望んでいない。
――どうしてもダメだったら、僕のことを言うしかないかな……。
僕はもうすぐ死んじゃうんだよ、と。
絶対に言うつもりはなかったが、アクセルが治療を拒み続けるなら、彼の良心につけ込むしかない。
僕の最期のお願いだと思って言うことを聞いて――そう訴えれば、いくらアクセルでも聞かないわけにはいかないだろうし。
――やだな。そこまではしたくないな……。
アクセルは優しい。「ナイン はナイン として幸せになって欲しい」と心の底から思っている。
そんな彼に、本当のことを打ち明けるのは心苦しすぎる。知らないなら知らないまま、ヴァルハラに帰ってオリジナルと幸せに過ごして欲しい。
でもここままじゃ……心苦しい選択をしなければいけなくなるんだろうな……。
ナインは何度目かの溜息をついた。
自分の短い寿命が恨めしかった。
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