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第26話

 けれどアクセルは、なけなしの理性でナインを振り払った。 「いやだ……。ナインとはやらない……誰の力も借りたくない……」 「ねえ、そんなわがまま言わないで。約束したでしょ。いい子だから言うこと聞いてよ」 「いやだ……っ!」  はぁはぁ……と荒い息を吐きながら、それでもナインを拒否する。 「だって、そんな……そんなことしたら、俺が、自分を許せない……。自分から、あなたを求めた……って、ずっと後悔してしまう……」 「だから浮気にはならないんだってば。これはあくまで治療なんだから、求めたも何もない。何なら僕がヤりたがったってことにしてもいいんだし」  アクセルは首を横に振った。 「それでも、嫌だ……。それに、今はこんなでも、もう少し時間が経てば……そ、そうだ、治療薬をたくさん飲めば……」 「駄目だよ。そんなことしても治まらない。もう時間がないんだ。いいから早くベッドに行こう」 「いやだぁ……!」  腕を引っ張られ、アクセルは必死に抵抗した。  掴まれては振り払い、振り払っては掴まれ……を何度も繰り返した結果、とうとうナインが痺れを切らした。 「お願いだから言うこと聞いて! これ以上時間をかけたら、僕の方が死んじゃうんだよ!」 「…………えっ?」  どういう意味なのか、本気でわからなかった。  アクセルは顔を上げ、兄そっくりの人物を見上げた。 「な、に言ってるんだ……?」 「……きみには言うつもり、なかったんだけどね。実は僕、ほとんど時間が残されてないんだ。コピーだから、生まれつきすごく寿命が短くて……。多分あと三日も保たない」 「三日……!?」  愕然とし、目を見開く。  じゃあナインは、自分の命が残り少ないことを承知で、アクセルの治療に付き合ってくれていたということか。最初から自分は幸せになれないとわかった上で、それでもアクセルを優しく見守っていてくれたのか。  そんな……そんなことって……。 「う……嘘だろ……? な、何か方法はないのか……? ここは治療施設なんだし、寿命を延ばす方法くらい……」 「ないよ。そんな方法があるなら、最初からやってる」 「そ、な……」 「だからこそ、未練は残したくない。きみをちゃんと完治させて、ヴァルハラに送り届けてから死にたいんだ。そうじゃないと、死んでも死にきれない」 「…………」 「わかってよ。僕の最期のお願いだと思って……今だけ、言うこと聞いて」 「……う……」  アクセルの目からどっと涙が溢れた。  自分のことやナインのこと、様々な感情が一気に集まって喉が詰まり、言葉が出てこない。

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