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第31話
「ナイン、ここの厨房ってどこにある? 借りていいか?」
「いいけど……何するの?」
「甘い玉子焼き食べてみたいんだよな? せっかくだから作ろうかと思って」
「えっ……?」
「あと三日しか残ってないなら、悔いのないように過ごさないとな。俺も協力するよ」
そう言ったら、ナインは驚いたように目を丸くした。
「いや、そんな……僕のことは気にしなくていいって。アクセルは治ったかどうかヴァーリ様に判断してもらって、早くヴァルハラに帰った方が」
「いいんだ、俺には時間がたくさんあるから……。たいしたことはできないけど、最期くらい看取らせてくれ」
「アクセル……」
「それで、厨房はどこって言ったっけ? 案内してくれないか?」
ナインの返事を待っていたら、彼は少し目を細めてこちらを見た。
やがて形のいい眉尻を下げ、呟くようにこんなことを言う。
「いい子だなぁ……本当に」
「え?」
「いや、何でもない。ありがとう……こっちだよ」
ナインに案内され、厨房に向かう。
施設の厨房は大人数で複数調理ができる広さになっていて、調理道具もたくさん揃っていた。
ただ、今は入院患者が少ないので食事の準備にもさほど時間はかからない。空いている時なら自由に厨房を使っていいそうだ。
「玉子焼きはいつもこれで焼いているんだ」
と、ナインが使い込まれた四角いフライパンを取り出す。
「アクセルは普段どんな風に料理してるんだい? お手並み拝見させてよ」
「よし、わかった。世界一美味しい玉子焼きを焼いてやる」
エプロンも一緒に借り、アクセルは早速調理に入った。
ボウルに卵を三個割り、牛乳や砂糖を加えて卵液を作り、油を引いて熱したフライパンに流し込む。
一気に流し込むのではなく、丁寧に巻きながら複数回に分けて卵液を流し入れた。
「よっ……と」
最後の卵液を流し入れ、くるくると卵を巻き、ひょいと裏返したら完成である。
白い皿に盛り、黄色くてツヤツヤの玉子焼きをナインに出してやった。
「はい、できたぞ。これがうちの玉子焼きだ」
「わあ……美味しそう! 早速いただくね」
ナインはお行儀よくナイフとフォークを使い、玉子焼きを一口サイズに切った。
切った玉子焼きを口に入れた瞬間、パアッと顔を輝かせる。
「美味しい~! ほのかな甘みと卵のコクも上手くマッチしてて、食感もふわふわだ!」
「よかった。足りなければまだ作るから、遠慮なく言ってくれ」
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