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第32話

「じゃあアクセルも一緒に食べよう。もう食欲は治ってるから、好きなもの食べていいし」 「ええ? それはナインのために作ったやつなんだが……」 「はい、あーん」  フォークに刺した玉子焼きを近づけてくるので、アクセルは仕方なく口を開けた。  ぱくりと玉子焼きを食べたが、いつもと変わらない味だったので安心した。  自分の玉子焼きを味わっていると、ナインが悪戯っぽく笑った。 「ふふ、ちょっとやってみたかったんだ。フレインにも『あーん』とかされてる?」 「いや、そんなにやってないよ。半分にされた饅頭を口に押し込まれたことはあるけどな」 「何そのシチュエーション。楽しそうな毎日送ってるなぁ」 「……そう、だな。俺ばっかり楽しくしてて、本当に申し訳ない」 「あっ、違う違う。嫌味とかじゃないんだ。僕の方こそごめんね」  慌てて否定されたが、それでも複雑な気持ちは消えなかった。  視線を落としていると、ナインは苦笑しながら言った。 「本当に気にしないで。僕はコピーだけど、精一杯生きたつもりだから。ここで徳を積んでおけば、もしかしたら何かに生まれ変われるかもしれないしね」 「それ……さっきも言ってたけど、『生まれ変わり』なんて起こるのか? ここで死んだ人はみんな等しく黄泉の国(ヘル)に行くんだろ?」 「僕はあまり詳しくないけど、ヴァーリ様曰く、そういうこともあるみたい。死んだ人が全員黄泉の国(ヘル)に留まり続けたら、いずれ黄泉の国(ヘル)が定員オーバーになっちゃうでしょ? だから定期的に魂を浄化して、何か別の生き物に転生させることもあるらしいよ」 「そ、そうなのか? じゃあナインがまた生まれ変われる可能性も……」 「ゼロではないかな」  それを聞いたら、少し気持ちが楽になった。  生まれ変われるのなら幸薄いナインも今度こそ幸せになれるかもしれないし、何かの奇蹟が起きて再会することもあるかもしれない。  アクセルはガシッとナインの両肩を掴み、力強く言った。 「ナイン、絶対生まれ変わろう。俺、黄泉の国(ヘル)の女王とはある程度懇意にしてるんだ。誠心誠意頼み込めば、転生の優先度を上げてくれるかもしれない。それで上手いこと何かに生まれ変わったら、絶対にまた再会しよう」 「はは……気が早いなぁ。生まれ変わったら、僕はきみのこと覚えてないかもしれないのに」 「俺が覚えてる。ナインが何も覚えてなくても、俺は全部覚えてる。だから、会えばきっとすぐにわかるよ。……いや、見つけてみせる」  力強く言い切る。根拠はないけど、何故か絶対に見つけられる自信があった。  ――この人は兄上のコピーなんだ。魂がほぼ共通してるなら、きっと……。

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