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第37話

 ――兄上がそういう感じならあまり心配することはないのかな……。  退院した後、泣きながら事の経緯を説明した時は、手ひどくお仕置きされることも覚悟していた。理由はどうあれ浮気したことは事実だから、しばらく素っ気ない態度をとられてしまうだろうと思っていた。  だけど兄は一瞬複雑そうな顔をしたものの、強く非難してくることはなかった。それどころか、「またいつか会えるよ」と慰めの言葉もかけてくれた。 「兄上……もっと怒ってもいいんだぞ……? 俺、ナインとはかなり親しくしてたし……」 「怒るって、どこを怒ればいいのさ? 別にお前は浮気したわけじゃないでしょ。あくまで治療の一環だし、ナインくんだってあくまで友達だ。それ以上の存在じゃないよね?」 「う、うん……」 「なら問題ないじゃないか。そもそも、私という存在がいながら他の子に浮気するなんてあり得ないし。ましてや相手はコピーだよ? オリジナルの私が負けるはずないでしょ」  そう言い切り、兄はいつも通りの生活に戻ったものだ。  この辺りは自分に自信があるかどうかの差なんだろうが……元カレと食事しただけで「浮気だ!」と喚き散らすアクセルとは、エラい違いである。 「あ、そういえば……」  食事の席に着きながら、兄が言った。 「今日予定表を配りに来た人、初めて見る顔だったよ。金髪の美形で、ちょっとバルドル様に似てたかも」 「えっ……?」 「新しくバルドル様の部下にでもなったのかな。忙しそうにしてたから、名前までは聞けなかったけどさ。下っ端らしく、今はいろんな雑用を任されているのかもね」 「……!」  アクセルはハッと息を呑んだ。  当たりかハズレかわからないが、すぐにでも確かめずにはいられなくなった。 「ちょ、ちょっと出掛けてくる!」 「うん、いってらっしゃい」  兄も全てを察しているかのように送り出してくれる。本当によく出来た兄だ。  ダッシュで世界樹(ユグドラシル)の麓まで行き、係の人がいないか確認する。  兄の言う「金髪の美形」はおらず、余ったスケジュール表が配布ボックスの中に入っているだけだった。  ――さすがにもういないか……。  がっくりと肩を落とす。  せめて一目でも確認できれば当たりかハズレか判断できたのに、残念だ。  今度からスケジュール発表時は俺が確認しにこようかな……などと考えていると、 「ああ、まだ人がいらっしゃった」 「……!」  世界樹(ユグドラシル)のゲートから、誰かが姿を現した。  その人は、兄の示した条件にピッタリ合致していた。

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