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第39話
ノインは小さく微笑んで、言った。
「では、僕はこれで。あまりのんびりしていると、先輩たちにドヤされてしまいますので」
「あ、ああ……そうか。お仕事頑張ってくれ」
「ありがとうございます。それでは」
礼儀正しく挨拶をして、今度こそノインとやらは帰って行った。
「…………」
残されたアクセルは、無言で世界樹 を見上げた。
――結局、ほとんど何もわからなかったな……。
名前だけでも聞き出せたから、そこは収穫と言うべきか。
もっとも名前がわかったところで「だから何?」のレベルだし、本当に彼がナインの生まれ変わりなのかは謎のままである。
――まあでも、寿命に関係なく人生を謳歌できてるなら、それでいいか……。
下働きとしてこき使われているようだが、ナインの時には出来なかったこと――自由に外に出るとか――が出来ているなら、それはそれで喜ばしい。
バルドルのところにいるみたいだから、今度差し入れで甘い玉子焼きを弁当箱にたくさん詰めて持って行ってあげよう。
それを食べたら、もしかしたら何か思い出すかもしれないし、思い出さなくても彼が喜んでくれればそれでいい。
「またな、ノイン」
そう呟き、アクセルは家に戻った。
兄は既に自分の分の朝食を食べてしまっていて、使った食器を片付けているところだった。
「おかえり。どうだった?」
「多分間違いないと思う……が、確実なことは何もわからなかった。生まれ変わった判定ってやっぱり難しいな……」
「そりゃそうだよ。名前も姿も記憶も全部別人だもん。判断しようがないでしょ」
「でも兄上は、『もしかしてこの人かな?』って思ったんだろ? だから俺に教えてくれたんだよな?」
「まあね」
「なんでわかったんだ? 兄上こそナインには会ったこともないし、話したこともないじゃないか」
「そりゃあお前、彼は私のコピーだよ? そんなの、見た瞬間ビビッとくるって」
「……そういうものなのか?」
「そういうものさ。まあとにかく、目的の人物を見つけられてよかったじゃない。これで毎日卵を買ってこなくてもよくなったかな」
「あっ、いや……今度は玉子焼きを差し入れしようと思ってるんだ。だからもう少し必要になる」
「そうかい、まあ好きにしなよ」
食器を片付け、キッチンを拭いたところで兄が言った。
「あ、玉子焼きを差し入れに行く時は教えて。私も挨拶しに行くからさ」
兄はそのまま庭に出て、一人で鍛錬し始めた。準備体操の後は、ちゃんと筋トレからスタートしている。この辺はナインに教わった順番通りだ。
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