41 / 42

第41話

 世界樹(ユグドラシル)を通り、バルドルの屋敷に向かう。  いつも通り屋敷のドアノッカーを叩いたら、中から出てきたのは見慣れない青年だった。少なくともノインではない。この人もバルドルの下働きの一人のようだ。 「どちら様ですか?」 「あ、ええと、ノ……じゃない、バルドル様に差し入れをと思いまして」  いきなり「ノインに差し入れ」というのはいろいろ角が立ちそうだったので、あくまでバルドルへの差し入れというていにしておく。  するとその青年は怪訝な目でこちらを見て、言った。 「はあ、そうですか。バルドル様にアポイントはとっておりますか?」 「えっ? いえ、それは……。アポイントが必要だとは聞いてないんですけど」 「バルドル様はお忙しい方です。どこの誰とも知らない者を、屋敷にお通しするわけにはいきません」 「そうなんですか……? あの、じゃあこれ差し入れますので、後日また伺います」  両腕で抱えた弁当箱を差し出したら、青年は更に怪訝な顔になった。 「そちらは?」 「ただの弁当です。たくさん作りましたので、皆さんでどうぞ」 「ではこちらで中を改めさせていただきますね」  彼は弁当箱を奪うなり、包んであった風呂敷を雑に解き、上から順に弁当箱を開け始めた。  しかも自分の足元に置き、次々と手掴みでおかずをひとつひとつ弁当箱の蓋に出していく。  いくら何でも食べ物をそんな風に扱われるのは許容し難く、アクセルはやんわりと止めようとした。 「ちょっと待ってください、食べ物を素手で触るのはよくないのでは? 中は普通の弁当ですよ?」 「それなら、なおのこと詳しく改めないといけません。万が一毒が入っていては一大事ですから」 「いや、そんなの入ってませんから」  アクセルの訴えも虚しく、どんどん弁当の中身が外に出されていく。  綺麗な盛り付けも台無しになり、ナインの好物だった甘い玉子焼きも指で半ば潰されてしまっていた。  ――あああ……せっかく作ったのに……!  改めるのは仕方ないとはいえ、一生懸命作ったものをそんな風に扱われると悲しくなる。  せめて箸やフォークを使って、皿に一品一つずつ出して毒見すればいいものを……何でそんな雑な方法で改めないといけないのか。  さすがに文句を言ってやろうかと思っていたら、後ろで見ていた兄がすっ……と一歩前に出た。  そして弁当箱をひっくり返している青年に話しかける。

ともだちにシェアしよう!