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第43話

「まったく、ひどいことするなぁ……。非常識にも程があるんじゃないの、あの人」 「ああ……。まさかいきなり台無しにされるとは思わなかった」 「あーあ、どうせならここで斬ってやればよかったな。お前が作ったお弁当をこんな風にしちゃうなんて、さすがに下働き失格でしょ。クビだよ、クビ」  ……兄の言う「クビ」は、文字通り首が飛ぶことなので、単純な失業とはわけが違う。  苦笑いしながら弁当の蓋を閉めて風呂敷で包み直していたら、バルドルが血相を変えてやってきた。 「ああ、やっぱり! アクセル、フレイン、ごめんね。うちの下働きがすごく失礼なことをして……」 「あ、バルドル様……ご無沙汰しております。すみません、アポもなしに訪ねちゃって」 「アポなんてなくても、少しくらいなら全然構わなかったのに……。本当にごめんね。それ、わざわざ差し入れのために作ってくれたんでしょう?」  アクセルが包んでいる弁当箱を示してくるバルドル。  それを両手で抱え直し、アクセルは苦笑で答えた。 「いいんです、また作ってきますから。それに、いきなり差し入れに弁当ってのもちょっと変だったかなって反省もしてるんです」 「いや、アクセルの料理は美味しいからね。お弁当でも十分嬉しいよ。……それで、今日はどういう要件だったの?」 「あーっと……それは……」 「何かヴァルハラで不便なことでも起きたかな。今度世界樹(ユグドラシル)の側に目安箱を常設しようと思ってるから、もし何かあったら今後はそこに意見を書いてくれる?」 「いえ、ヴァルハラで問題が起きたわけではなくてですね……」 「そうなの? じゃあ何だろう?」 「ええと……何と言えばいいのか……」  説明に困っていると、兄が代わりに話を引き取ってくれた。 「久しぶりにバルドル様にご挨拶を……と思っただけですよ。ご無沙汰の間に、新しく下働きも数名雇われたみたいで。ご活躍のようで何よりです」 「ありがとう。家のことをやっている時間が減っちゃったから、下働きを三名ほど雇ったんだ。みんな新人だから、ちょっと、その……まだ教育が行き届いていない子もいて……。さっきの子には強く言い聞かせておくよ。本当にすまなかったね」 「なるほど、先程の青年も含めて下働きは三名なんですね。それなら、今のうちに顔と名前を一致させておいてもいいですか? ヴァルキリーみたいに、誰が誰かわからないと後々不都合が生じるかもしれませんし」  アクセルがはたと兄を見たら、兄は一瞬だけこちらにウィンクをしてくれた。アクセルにはなかなか真似できない、会話テクニックだ。

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