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第46話

「これ、食べてみてくれないか?」 「えっ……? いいんですか? それ、バルドル様に差し入れするお弁当だったはずでは」 「いや、これは元々あなたの……」 「……?」 「……ごめん、何でもない。とにかく、食べてみてくれ」 「はあ、ありがとうございます」  怪訝な顔をしながらも、ノインは近くにあったフォークで玉子焼きを一口サイズに切り、口に運んだ。  ドキドキしながら反応を待っていると、 「わあ、美味しいですね。ほんのり甘くてふわふわで、食感もいいし、卵本来のコクも出ています」 「本当か? よかった……」 「それに……何でしょうかね、なんか懐かしい味がするような気が……」 「えっ……?」 「アクセルさんの玉子焼きを食べるのは初めてなんで、気のせいなんでしょうけどね。それだけ親しみやすい味ってことかもしれません」 「…………」  その答えで十分だった。  ぱちっと瞬きした途端、ぽろりと涙がこぼれてしまい、アクセルは慌てて目元を拭った。 「あ、あの、大丈夫ですか? 僕、何か気に障ることでも……?」 「いや、違うんだ。嬉しくて、つい……」 「嬉しい、とは……? 普段あまりお料理褒められないんですか?」 「そうじゃないよ。ノインの口に合ったのが何より嬉しいんだ」 「はあ」 「今度はちゃんと、綺麗な状態で差し入れするからな。他にも『こんなのを食べてみたい』ってリクエストがあったら、遠慮なく言ってくれ」 「…………」  そう言ったら、今度はノインがハッとしたようにこちらを見てきた。 「どうしたんだ?」 「ああいえ、何と言いますか。ちょっとデジャヴ感があるような……」 「えっ……?」 「いえ、これも気のせいですね。それより、お茶淹れますよ。あまりお客様を待たせては申し訳ないですし」 「あ、ああ……ごめん。俺が邪魔しちゃったな」  アクセルは急いで弁当箱を片付けて、食堂に戻った。  兄の隣に座り、お茶が出てくるまでおとなしく待つ。  兄はいろいろ察しているかのように、頬杖をついてこちらを見てきた。 「彼とお話できた? 確かナインくんだっけ? いや、ノインくん?」 「今はノインだな。なんか俺の玉子焼き、うっすら覚えてたみたいなんだ。本人は気のせいだと思ってるけど、もしかしたら記憶の一部は残っているのかもしれない」 「そうかい。それなら、何かの拍子に少しずつ思い出していくかもね」 「そうだな……。そしたらバルドル様にお休みもらって、お弁当もってピクニックにでも行ってみたい」 「いいけど、あくまでただの友達との遊びにしてね」  軽く牽制されたので、アクセルは慌てて手を振った。 「あ、当たり前じゃないか。浮気はしないよ」

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