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第63話

「ふふ、わかってますよ。アクセルさんが好きなのは、あの美人で強いお兄さんなんですよね?」 「えっ……?」 「見ていれば何となく察せます。お二人とも、すごく仲がいいですし。お互いに思い遣れる関係、羨ましい限りです」 「ノイン……」 「僕にも、そういう兄弟がいたらよかったな」 「っ……」  そう言われ、アクセルは言葉に詰まった。  複雑な感情が頭に浮かび、どう返答していいかわからなくなる。  ――そうなんだよな……。少しでも条件が違ったら、ノイン……いや、ナインが俺の兄になっていた可能性もあるわけだし……。  元を正せば、アクセルも兄・フレインも、バルドルやホズをモデルにして作られた存在である。  そしてナインたちも、同じくあの施設でグロアによって作られた。  だから少しでもタイミングがズレていたら、ナインの方が兄になっていた可能性も考えられる。  もしそうなっていたらナインは穏やかな性格のまま、トレーニングのアドバイスをしてくれたり、身体にいい料理を振る舞ってくれたりしていただろう。  そしてアクセルも、そんなナインを大切に想いつつ、仲のいい兄弟として過ごしていたに違いない。 「あっ……今の発言は気にしないでくださいね。別に深い意味はないので」  余程暗い顔をしていたのか、ノインは苦笑しながら言った。 「それに僕は、今の状況でも十分満足してます。課題はありますけど、屋敷の管理自体は嫌いじゃないですし、僕のことを考えていろいろ親切にしてくれるお友達もできましたし」 「え……?」 「ありがとう、アクセルさん。よかったら、またこうして仕事を手伝いに来てくださいね」  そうか、ノインはもう満足なのか。  上を求めればいくらでも求められるけど、変な欲は持たずに今の状況をそのまま受け入れているのか。  ――思えば、ナインもそうだったな……。  自分の寿命を受け入れ、決して悲観することなく、最期まで精一杯生きていた。  だから死ぬ間際の言葉は「もう思い残すことはない」だった。  アクセルなんかは割と欲のある方だから「もっとこうしたい」とか「ああしたい」とか思ってしまうけど、彼は根本からして考え方が違うらしい。達観しているというか、器が大きいというか……アクセルにはなかなか真似できない。 「ああ、もちろん。いつでも手伝いにくるよ」  アクセルは止めていた手を動かし、今度こそ掃除を再開した。  窓を隅々まで拭き、床やテーブルもモップで綺麗にしたら、隣の部屋に進む。 「仕事を手伝うのもいいけど、今度はどこかに遊びに行かないか? まあ俺もそんなに遊び場を知ってるわけじゃないから、山にピクニックに行くくらいになっちゃうけど」 「ピクニックですか、いいですね。その時はまた、あの甘い玉子焼きをお弁当に入れてください」 「もちろん入れるよ。他に入れて欲しいものがあったら、リクエストしてくれよな」  そんな風に話しながら、隣の部屋の掃除をしようとしたのだが、 「おいノイン!」  ドタドタと、ドライがこちらにやってきた。一体何の用なのか。

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