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第66話

「そういうわけだから、バルドル様が戻ってくるまであと二日、のんびり過ごそう。とりあえず、うちでお茶でもしないか?」  そう誘ってみたら、ノインは呆気にとられたような顔になった。  だがすぐに緩やかに微笑み、小さく噴き出してくる。 「ふふっ」 「……なんだ?」 「いえ、ありがとうございます。こんなに僕のためにいろいろしてくれた人、初めてです。前世の僕は、よっぽどアクセルさんに恩を売っていたんですね」 「お、恩を売るって表現は変な感じがするが……。というか、そういう恩がなくても俺は同じようなことをしたと思うぞ。ドライの言い分はどう考えてもおかしかったし」 「本当にありがとうございます……。自分じゃなかなか言えないですし、屋敷を飛び出してみるなんて考えもしませんでした」 「そうか。だったら、たまにこういう手段も使ってみるといいよ。何でもかんでもノインが背負い込む必要ないんだからな」 「はい」 「よし、じゃあ行こうか」  二人で世界樹(ユグドラシル)を通り、一度ヴァルハラに戻る。  当たり前のように自分の家に帰ったら、兄にものすごくびっくりされてしまった。 「え、お前……何で帰ってきたの? ノインくんも一緒って、どういうこと?」 「ああ、実は……」  ササッと事の経緯を説明したら、案の定兄も苦笑してきた。納得と同時に、こんなことを言ってくる。 「お前は優しいねぇ。私だったら、その場でドライくんを斬っちゃってたよ」 「……兄上は対応が過激すぎるんだよ。バルドル様の留守中に、そんな血みどろ事件を起こすわけにはいかないだろ」 「まあね。それじゃあ、あと二日はノインくんがうちにいるわけだ?」 「あっ、いえ……さすがにそれはご迷惑ですから、僕はどこかに宿をとりますので、それで……」  どこまでも遠慮深いノインに、今度はアクセルが苦笑する番だった。 「だから遠慮しなくていいんだって。というか、ヴァルハラに宿屋なんてないぞ」 「えっ? そうなんですか?」 「ああ。ヴァルハラは観光施設じゃないからな。誰かが来たら、家に泊めてやるっていうのが暗黙の了解になってるんだ」  だからいつ誰が泊まりに来てもいいように、アクセルの家でも客用の布団や食器は用意することにした。  今まで物置きと化していた一部屋も綺麗に片付け、ゲストルームとして使えるように定期的に掃除している。 「そういうわけだから、本当に気にしないでくれ。滅多にない機会だし、ゆっくりくつろいでいって欲しい」 「あ……ありがとうございます……。何から何まですみません……」 「いいんだ。じゃあ、今からお茶淹れるよ。適当に座っててくれ」  そう言って、アクセルはキッチンに入った。

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