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第68話

「ああ。トレーニングの知識は豊富だったけど、彼自身はあんまり……。ほら、生まれつき寿命が短くて施設の外にも出られなかったって言っただろ? だから運動するって言っても、施設の中庭を軽く散歩する程度だったんだ」 「そうだったんですね……」 「でも今だったら、自由に外に行くこともできるもんな。時間もたくさんあるし、これからは少しずつトレーニングしていくといいよ。ノインでもできるトレーニングメニュー考えておくから」 「ありがとうございます……。せめてドライ先輩に小突かれても大丈夫なくらいには、強くなりたいです」  そう言われ、アクセルは怪訝な目でノインを見た。 「……え、ドライって後輩をぶん殴ることもあるのか? そんなのパワハラどころの話じゃないぞ」 「あ、いえ、わざとぶん殴るんじゃなくて、勢いに任せてモップを振り回したらたまたま柄が当たってしまった……って感じです」 「いや、それでもダメだろ……。心底、ドライが雇われた意味がわからないんだが」 「ただの数合わせじゃないの? それっぽい人だったら誰でもよかったんだよ、きっと」  などと言い、兄が勝手にお茶とお菓子を食べ始める。 「さ、きみたちもこっちに来てお茶にしよう。せっかく仕事をほっぽり出してきたんだから、仕事のことを考えるのはナンセンスだよ」  確かにその通りだ。  言われるがまま、アクセルはすっ……と立ち上がって席に着こうとした。  だが、ノインはまだ自由には動けないようで、壁に手をついて何とか自力で立ち上がろうとしている。 「あっ、ごめん。危ないから無理しないでくれ」  慌てて駆け寄り、身体を支えてやった。  ノインはさも申し訳なさそうに、眉尻を下げた。 「すみません……もう、本当にお恥ずかしい……。スクワット数回でこんなにヨロヨロしてしまうなんて」 「最初は誰でもそうだよ。俺も初めて数キロの重りを担いでスクワットした時は、歩けないレベルの筋肉痛が来たもんだ。続けていれば、少しずつ慣れていくさ」 「だといいのですが……」 「しばらく休んでも脚の疲れがとれないようなら、泉に浸かりに行くか? あれに浸かると、死人以外はあっという間に回復するんだよ」 「そうなんですね。じゃあ自力で歩けなさそうだったら、是非……」  苦笑しつつ、ノインもテーブルに着いた。  そしてしばらくお茶をしながら、会話に花を咲かせた。

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