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第71話
「なんだ、そうなのか。他の連中がひそひそしてるから、てっきり新しい恋人でもできたのかと思ったぜ」
「はあ? 新しい恋人って……せめてもう少しまともな噂をしてくれよ」
アクセルは生前からずっと兄・フレイン一筋だ。新しい恋人なんてあり得ない。
というか、そんな誤解をされたらノインの方も迷惑だと思う。
軽く溜息をつき、アロイスに言った。
「そもそも、ただ普通に友達と歩いていただけで噂になるものなのか? どいつもこいつも、人の噂好きすぎやしないか?」
「どーだろうな? ぶっちゃけオレはあんま興味ないけど、人の色恋に興味を示す連中は一定数いるもんだぜ?」
「……そういうものか? 自分には関係ないのに、一体何が面白いんだか」
「知らね。でもオレの耳には、そういうひそひそ声が結構聞こえてきてたぜ。オレ、元木こりだから耳だけはいいんだよな。『アクセルさん、浮気してるんじゃね?』なんて言ってるヤツもいたぜ?」
「はああ? 何だよそれ。思い込みだけで勝手に不名誉な噂垂れ流すな」
ちょっと友達と歩いていただけで「浮気」とか……一体どういう想像力をしているのかと思う。腹立たしい。
――まったく……さっきから変な目で見られている気がしたのは、そういうことだったのか。
いつも兄・フレインと一緒に出歩いているのに、今日は違う人と一緒だから、一体どうしたのか……と噂されたのだろう。別にいいじゃないか、たまには友達と歩いていたって。
兄とは今でもずっと相思相愛なんだから、あり得ない噂を流すのはやめて欲しい。
やれやれ……ともう一度溜息をついていると、ノインが申し訳なさそうに眉尻を下げてきた。
「……なんかすみません。僕のせいで変な誤解をされてしまって」
「ああいや、大丈夫だよ。ノインのせいじゃないし、気にしないでくれ」
「でも、余計な誤解をされるのはなんだか申し訳ないですし。やっぱり僕とフレインさんが似ているのが原因なんですかね?」
「うーん……どうだろう? 確かにパッと見は少し似ているかもしれないけど、中身は全然違うぞ?」
「そうですね。僕はフレインさんほど気が強いわけではないので……」
「……兄上の場合は気が強いというより、単に過激なだけだと思うが」
「それでも、自分に自信があるのは羨ましいです。やっぱり僕も、少しずつトレーニングして心身ともに鍛えていこうかな」
ノインがにこりと微笑む。
「アクセルさん、後で僕に合うトレーニング方法教えてくださいね」
「ああ、もちろんだ」
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