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第75話

 ――なんで……なんでこいつが、治療のことを……。  動揺し指先を震わせていると、青年は何でもないことのように言った。 「ああ、何も不思議がることはありません。皆さん当たり前にやっていることですから」 「あ、当たり前……?」 「性欲の治療には、施設の従業員のお手伝いが必要……そんなのは周知の事実です。どの従業員にどういった方法でお手伝いしてもらったかまでは、存じませんがね」  なんだ、ナインのことを知っているわけではないのか。少し安心した。  だが青年は嫌な笑みのまま、残酷なことを口にした。 「あなたは先程『俺は欲求不満解消の道具じゃない』と仰いました。ですがあなたも、治療に際し、従業員を欲求不満解消の道具にしていたでしょう。それなのに、自分だけは道具扱いされるのを拒むとは、道理が通りませんねぇ」 「そっ……!」 「もちろん獣化の治療ですから、そのこと自体を非難するつもりはございません。ただ、自分がやったことを今更拒否するのはいかがなものか。やったからには、いつかやられることも覚悟しなくてはね」  そんな理屈、聞いたことがないのだが。  自分は無理矢理ナインを襲ったわけではないし、むしろ最後の最後まで拒否し続けたつもりだ。  どちらかというとナインの方が「ちゃんとアクセルを完治させてから死にたい」と言い張ったから、やむを得ずそういう流れになっただけで……。  ――道具扱いなんてしてない、よな……? 同意の上での治療だったんだよな、ナイン……?  気付いたら手のひらに汗をかいていた。  ナインに確かめたくなってきたが、ナイン本人はもうこの世にいない。  肝心のノインには記憶がないし、そんなこと聞ける間柄でもなかった。  ――いや、大丈夫……ナインは「道具扱いされた」なんて思ってない、はずだ……多分。  揺らぎそうになる心を何とか保ち、アクセルは大きく咳払いした。 「悪いが、俺の治療はあんた達が考えているようなものじゃない。変な言いがかりをつけられるのも迷惑だ。これ以上俺に付き纏わないでくれ」 「……察しの悪い方ですねぇ」  その言葉と共に、ガタイのいい男たちがじりじりとこちらに近寄ってきた。  周りを取り囲むように距離を詰められ、逃げ道がなくなってしまった。

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