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第77話※
「ぎゃああぁっ!」
男たちの汚い悲鳴が聞こえてきた。
次いで鉄っぽい臭い――濃厚な血の臭いがツンと鼻の奥を刺してくる。
アクセルを抱えていた男もパニックになってしまったのか、荷物のようにこちらをぶん投げてきた。
おかげで地面に叩きつけられ、うっかり背中側を強打して一瞬息ができなくなった。
「……きみたち、うちの弟に何してるのかな?」
今度は大好きな兄の声が聞こえた。
その瞬間、一気に気持ちが緩んで、いつもの安心感が広がっていく。
例え自分は動けなくても、兄がいれば大丈夫という絶対の信頼感が湧いて来る。
「おっと、これはフレイン様ではないですか。いきなり抜刀とは穏やかではないですねぇ」
例の青年だけは声音を変えず、淡々と兄と対面しているようだった。
――こいつ……本当に、どういう神経してるんだ……?
そこまで高いランクでもないはずなのに、何故兄に睨まれて平気でいられるのだろう。何故先程からずっと表情が変わらないのだろう。
単純な強者より、こういう得体の知れない人物の方が余程恐ろしい。
「いきなり抜刀させるようなことをするからだよ。ただの買い物なのに、なかなか帰ってこないと思ったら案の定だ。……どうせ、アクセルに変なことをしようとしたんだろう?」
「いえいえ、とんでもない。我々は至極真っ当な仕事を、アクセルさんに相談していただけですよ」
「真っ当な仕事、ね……」
全てを言われるまでもなく、兄はいろいろと察しているようだった。
直接顔を見なくても、全身から怒気と殺気が滲み出ているのがわかる。
そんな空気を全く気にしていないのか、青年はにこやかな口調のまま続けた。
「しかしアクセルさんは、どういうわけか承知してくれませんで。正当な理由を説明しても、なかなか納得してくださらなかったんですよ。もしかしたら、フレイン様のことを気にしていらしたのかもしれません」
「…………」
「そうだ。それならフレイン様もアクセルさんと一緒にお仕事しませんか? それならアクセルさんも拒む理由がなくなります。ええ、それがいい。そうしまし……」
青年の言葉はそこで途切れた。
ザシュッと鋭く太刀が振るわれた音がして、また濃厚な血の臭いが鼻を刺した。叫び声は聞こえなかった。
ゴトン、と重いものが地面に落ちた音も聞こえる。
ようやく意識がハッキリしてきて半身を起こそうとしたら、ゴロゴロと何かがこちらに転がってきた。
嫌な予感がしてチラリと視線を向けたら、穏やかな笑みを貼り付けたままの青年と目が合った。
「っ……!」
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