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第80話
「いえ、いいんです……。フレインさんの言う通りですから……」
「ノイン……」
「……やっぱり僕、これ食べたらバルドル様のお屋敷に帰ります。これ以上アクセルさんに迷惑はかけられません」
「い、いや、それはダメだろ。途中で帰ったら、ドライが自分の不出来に気づかずに終わっちゃうぞ」
「いえ……それももういいんです。元はと言えば、ドライ先輩にハッキリ言えない僕が悪いんですから」
「だけど……」
「ありがとうございます、アクセルさん。こんな僕を気にかけてくれて。その気持ちだけで十分です」
にこりと微笑まれ、アクセルは言葉を失った。
その後はやや気まずい空気の中、早めの夕食をとった。
兄に八つ当たりされたノインも気の毒だったし、兄が何でそんなに苛立っているのかも理解できなかった。
「なあ……本当に帰っちゃうのか?」
世界樹 の前で、アクセルはもう一度ノインを引き止めた。
「兄上のことだったら気にしなくていいんだぞ? 今日は多分機嫌があまりよくなくて、むちゃくちゃなことを言い出しただけだと思う」
「いえ……フレインさんは、何かと不甲斐ない僕に怒っているんです」
「だから何でノインが怒られなきゃいけないんだよ。俺がトラブルに巻き込まれたことに関しては、ノインは関係ないじゃ……」
「……怒りたくもなるでしょう。自分のコピーがこんな有様なんですから」
「えっ……!?」
愕然としてノインを見返す。
ノインは図書館から借りた本を胸に抱いたまま、視線を落としていた。
――俺、『ナインは兄上のコピーだった』ってことは言ってないよな……?
自分は言っていない。でも知っているということは、つまり……。
「兄上から聞いたのか……?」
「ええ……。生前の僕は、フレインさんのコピーだったんですよね?」
「それは、まあ……」
「言われてみれば、驚くほどしっくり来まして。今まではいつもこう、地に足がついていないふわふわした感じがしていたんですが、フレインさんに教えてもらって初めて、自分が何者なのか……『ああそうだったのか』って納得できたんです」
「そ、そうか……? でも、それを理由にノインを責めるのは理不尽だろ」
そうフォローしたら、ノインは小さく首を横に振った。
「今まで僕は、自分に自信が持てませんでした。強く言われると何も言い返せなくて、だから誰かに言われるまま、面倒な役目も全部引き受けちゃっていました。それで仕事が上手く回るなら自分が我慢した方がいい、それが自分の役目なんだ……って諦めてもいました」
「ノイン……」
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