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第81話
「でもフレインさんに、遠回しに『足手まといは引っ込んでろ』って言われた時……初めて『悔しい』って思ったんです。アクセルさんが危ない目に遭っているかもしれないのに、何もできない自分が不甲斐なくて……。今までは言われたら言われっぱなしで、『仕方ないんだ』って諦めるばかりだったのに」
そこまで言って、ノインは顔を上げた。落ち込んでいる様子はなく、その表情はどこか晴れやかだった。
「ヴァルハラに来られてよかったです。短い間でしたが、いろんな学びを得られました。戦士 の皆さんは本当に強いですし、それが当たり前になってる。腕っぷしだけじゃなく、心もね。だからこんな僕を見て、フレインさんが呆れちゃう気持ちもわかりますし、僕自身も情けないなと反省しているんです。だからこれからは、少しずつでも強くなりたいなと思いまして」
「強く……?」
「ええ。もちろん、戦士 の皆さんには敵いませんけど、身体を鍛えれば心も強くなるって本に書いてありましたので。いい機会ですから、僕も簡単なトレーニングから始めてみようと思います」
「そうか……」
「次のお休みの時は、今度こそお弁当持ってピクニックにでも行きましょうね。それまでに、ちゃんと足腰を強くしておきますから。……あ、この本は後日返却しに来ます」
本を抱えてにこりと微笑んでくるノイン。
そんな決意を聞かされたらこれ以上引き止めることはできず、アクセルも小さく微笑んだ。
「……わかったよ。いろいろ大変そうだけど、頑張ってくれ」
「はい。それでは、また。フレインさんにもよろしくお伝えください」
ノインが世界樹 のゲートを通っていく。
彼の姿が見えなくなるまで、アクセルはその場で見送っていた。
「見送りは済んだかい?」
家に戻り、兄に声をかけられる。兄はリビングのテーブルで食後のコーヒーを飲んでいるところだった。
アクセルも自分の分のコーヒーを少しだけ入れ、マグカップに注いで残りをミルクで割った。
「ノイン……強くなるって言ってたよ」
自分の席につき、ミルクコーヒーを一口飲む。
「落ち込んでいるかと思ったけど、なんか吹っ切れたような顔してた。もしかしたら兄上の喝が効いたのかもな」
「さて、どうだろう。単にノインくんに意地悪言っただけかもよ?」
「またそんな……」
「まあ、自分を見直すきっかけになったならよかったんじゃない? せっかく生まれ変わったのに、いつまでも不甲斐ないままじゃ情けないしね」
「そうだな……」
アクセルはミルクコーヒーの水面を見つめた。
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