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第82話

 本当はもっと力になってやりたかったが、アクセルができるのはここまでだ。  あとはノイン自身が努力して、少しずつ成長していくしかない。  心配なところは多々あるが、本人が前を向けたなら、こちらは離れたところから見守らせてもらおう。  ピクニックに行くことになったら、美味しいお弁当を作ろう……と考えていると、 「そんなことよりお前だよ。なんだい、今日の体たらくは。あんな連中なんかスパッと斬って、さっさと帰って来なさいよ。そうすれば卵が割れることもなかったのに」  兄にじっとりした目を向けられ、嫌な意味でドキッとした。  冷や汗をかいている側で、兄はひたすら小言を言い続ける。 「まったく、変に耳を傾けるからそういうことになるんだ。今回は間に合ったけど、間に合わなかったらどんな目に遭っていたかわかってる? 少しは学習しなさいよ」 「す、すみません……」 「だいたいお前は、自分が如何にモテるかを全く自覚してない。何度も被害に遭いかけてるのに、なんでわからないかなぁ。危機意識も低いし、いつもお兄ちゃんが助けてくれるからって油断してるんじゃないの?」 「そんなつもりは……」 「何度も言ってるけど、私だって万能じゃないんだからね。どうしても手が放せなくて駆けつけられない時だってあるんだ。そういう時は自分で何とかしなきゃいけないんだよ。その辺、いい加減学んでもらわないと困るんだけど」 「はい……すみません……」  膝の上に手を置き、身体を小さくしてお説教を受ける。  全部正論なので言い返せないし、小言の中に本気の心配が含まれているから、なおのことおとなしくしているしかなかった。  ――確かに俺、一番ヤバい被害には遭ったことないからな……。  いつもギリギリのところで兄に救出されてしまうので、本当の意味で痛い目には遭ったことがない。  だからこそ、危うい場面でも「兄上が来てくれる」と無意識に安心してしまう。  一度本当に痛い目を見れば少しは意識も変わるのかもしれないが……いや、そもそも痛い目には遭いたくないし……どう学習すればいいのか、よくわからない。 「……お前、話聞いてる?」 「えっ!?」  突然話を振られ、アクセルはびくっと肩を震わせた。  世にも恐ろしい目で睨まれ、青ざめながら答える。 「き、聞いてる……聞いてます……!」 「……本当に? じゃあ今私が何言ってたか、繰り返してみて」 「ええと……『いい加減学びなさい』……?」 「その次だよ。私は何を言ってた?」 「あ、え……あの……」  しまった、そこは聞いてなかった……。  だらだらと汗が出てきて、視線すら合わせられなくなってしまう。

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