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第84話

「あのね……こんな放置プレイなんて、本来なら甘すぎるくらいなんだよ? ちょっとでもタイミングが悪かったら、お前は今頃もっと酷い拷問を受けていたかもしれないんだ。こういう暗い場所で、相手が誰かもわからず、複数の人にひたすら犯される……。それと比べれば、ただ放置されるくらいどうってことないでしょ」 「っ……」 「つべこべ言ってないで、ちゃんと反省しなさい。いいね?」  冷たく突き放され、思わず泣きそうになった。 「あ……」  兄が離れていく。武器庫のドアを開け、出て行こうとする。 「兄上……」  呼びかけたけど、振り向いてはくれなかった。  バタン、とドアを閉められ、周囲はほとんど真っ暗になった。 「うぅ……」  暗い中で、アクセルはぐすんと鼻をすすり上げた。  ――兄上……俺が狭くて暗い場所苦手だって知ってるのに……。  いや、知っているからこそのお仕置きなのか。いつもみたいに、ベッドで拘束されてやられまくるのでは、お仕置きの意味が薄まってしまう。  仕方ないと言えば仕方ないけど、辛いことには変わりないからつい泣けてきてしまう。  ――まあでも、洞窟踏破よりマシか。何もしなくてもいずれ朝が来るんだから……。  アクセルはじっ……と目を閉じた。  目を閉じると、聴覚や嗅覚などがより一層鋭くなる。  最近はあまりやる機会がないが、死合い展開によっては目に頼らず戦うこともある。そんな時でもちゃんと戦えるよう、ホズに特訓してもらったのはいい思い出だ。あの経験があったから、唐突な目くらましにも対応できるようになったのである。  ――というか、ノインもホズ様に軽く稽古をつけてもらえばいいんじゃないか? 今はホズ様、透ノ国に出張中だけど。  ホズ様なら、嫌がらずに稽古つけてくれそうだけどな……と思う。  下働きの立場じゃ、雇い主の弟にお願いするのは気が引けるのかもしれないけど、一番の適役が近くにいるのだから頼らない手はない。  ……まあ、その辺を遠慮してしまうのがノインの人柄なのかもしれないが。 「ノイン……」  強くなります、と言っていた。  次はいつ会えるかわからないけど、また近々様子を見に行こうかと思っている。  今日は結局ヴァルハラまで連れてきて、ほとんど何もせずに帰してしまったし……。  ――というか、やっぱり悪いのは俺じゃなくて、俺に絡んできたアイツらだと思うんだけど……。  もちろん、ああいう連中を簡単にいなせなかったところは反省すべきだ。  ただ、あの連中が絡んでこなければこんなお仕置きも受けていないし、ノインだってバルドルの屋敷に帰ることはなかった。  そう考えると、ふつふつとあの連中に怒りが湧いて来る。  特にあのリーダー核の謎の青年。アイツは一体何なんだ。兄に首を落とされた後どうなったかは知らないが、もう二度と絡んで来ないで欲しい。

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