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第86話

「おはよう、アクセル。ちゃんと反省は……」  ようやく兄がドアを開けてくれたが、返事をするのも億劫だった。  ボーッと兄を見上げながら、「あー……やっと解放される……」と心の中で安堵したものだ。 「……お前、大丈夫? なんか焦点合ってないよ?」 「うん……」 「とにかくお疲れ様。家に戻ろうか」  兄が手錠を外して身体を支えてくれる。  一晩中拘束されていたからか、腕が痺れて感覚がなくなっていた。手首もやや鬱血しており、見るからに痛々しいことになっている。  でも、今はそんなことどうでもよかった。  とにかく水が飲みたい、シャワーを浴びたい、ベッドで眠りたい……それしか考えられなかった。  家に入るなり、キッチンに駆け込んでハチミツ入りレモン水を直接がぶ飲みする。作り置きしていた分では足りなくて、ミネラルウォーターまでがぶ飲みしてしまった。  次に浴室に向かい、服を全部抜いで頭からシャワーを浴びる。埃や汚れを流し、シャンプーやボディーソープで全身を洗い、泡まみれになった自分にもう一度お湯をぶっかける。 「はあぁ……」  そこまでしてようやく気分が落ち着いてきて、アクセルは長い息を吐いた。  水分補給と身体の洗浄が済むと今度はお腹が空いてきて、着替えてすぐにキッチンに戻った。 「……で、そろそろ落ち着いた?」  兄が様子を窺いにくる。  さすがに不満のひとつも言いたくなって、フライパンを火にかけながら口を尖らせた。 「落ち着いた? じゃないだろ。なんだよ、あのお仕置き。暗いし狭いし空気は悪いし、ずっと立ちっぱなしで無駄に疲れるし……あんなんだったら、いつもの凌辱の方がマシだった」 「ああ、そう……。つまり全然反省してないってことだね?」 「反省はしたよ。今度はもう、あの手の連中の話は聞かずに強引に振り切って帰って来る。……それはそれとして、そう反省したならお仕置きは終わりでいいだろ。一晩まるまる使う必要はないはずだ。俺には、ああいう拘束系のお仕置きは向いてないと思う」 「お仕置きされる側がなんで逆ギレしてるのさ……」 「そもそも、俺は言うほど間違ったことはしてないからな。『危機感が薄い』とか『すぐトラブルに巻き込まれる』とか、そんなことは今に始まったことじゃない。そういうのは俺自身が悪いというより、向こうから勝手にやってくるんだ。俺がいくら気を付けていても、どうしようもないこともあるんだ」  言っているうちにもっと腹が立ってきて、アクセルは更に不満をぶつけた。

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