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第87話
「だいたい兄上にだって、よくない部分があるじゃないか。俺のことばっかり説教するけど、そういう自分はどうなんだ? ベッドでやらかす時なんか、俺が『もう許して』って言っても聞いてくれないし、泣いてるのに止めてくれなかったりするじゃないか。そういうの、ちゃんと反省してるのか?」
「今その話は関係ないでしょ……」
「この際だから言わせてもらうけど、兄上はいろいろ調子に乗りすぎだと思う。お仕置きする人がいないからって、歯止めが利かなくなってるんだ。俺を想ってくれているのはわかるけど、やりすぎはやめてくれ。あまり無茶なことをされると、俺も『ただ八つ当たりされてるだけじゃないか』って思いたくなる」
「…………」
加熱したフライパンに卵を割り落とし、目玉焼きを作る。一緒にベーコンも焼き、並行してトーストも作った。
これ食べたらちょっと仮眠しよう……と考えていたら、兄が重い溜息をついてきた。
「……なかなかひどい逆ギレだね。これは違う意味でお仕置きにならなかったかもな」
「だから反省はしたんだってば。毎度毎度兄上の手を煩わせちゃうのは申し訳ないし、無視してさっさと帰ってくればよかったって思ってる。でも、その考えに行きつくまでに一晩はいらないだろ。暗くて狭くて空気の悪い場所に閉じ込める必要もなかったはずだ。お仕置き有無じゃなくて、やり方のことを言ってるんだよ」
「やり方に不満があったのはわかったけど、それはお前の立場で言うことじゃないよね。私からすれば、お仕置き終わった途端逆ギレしてこっちを非難してきているようにしか見えないんだけど」
「じゃあ、どう言えばいいんだよ? 言わなかったら伝わらないし、ずっと同じこと繰り返しちゃうだろ。次もああいうお仕置きをされるのは御免なんだよ」
「その『御免だ』って気持ちを含めてお仕置きなんだけど? お前、お仕置きをご褒美か何かと勘違いしてるんじゃないの?」
「そんなつもりは……」
「嫌なことをされるから、お仕置きとして成り立つんでしょうが。もう二度とされたくないと思うから、そうならないように反省するんでしょ。何贅沢なこと言ってるの」
「う……」
そう言われてしまうと、返す言葉がない……。
兄は腰に手を当てて、言った。
「それに、私が調子に乗ってるって? お仕置きする人がいないから、歯止めが利かなくなってるって? 随分な言い草だね。これでも、お前が本気で泣いて嫌がってる時はちゃんと止めてるんだけど? 本当に歯止めが利かなくなってるなら、お前のこと全部無視してやりたい放題やってるよ」
「そっ……」
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