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第88話
「そんな生意気な台詞を吐くのは、自分で自分をちゃんと守れるようになってからにしなさい。腕っぷしはあるはずなのに、いつも油断してピンチに陥って……。昔からずーっと危機意識が低いって言い続けてるのに、未だに直ってないどころか、開き直るとか呆れたね。毎回お兄ちゃんが助けてくれるからって、甘ったれるのもいい加減にしなさいよ」
「そっ……」
「何年もヴァルハラに住んでて、何回も同じようなトラブルに見舞われてるんだから、もう経験不足って言い訳も通用しない。今度は私、お前がピンチになっても助けないから。そのつもりでね」
「え……?」
さすがにそれは冗談だろうと思い、兄の顔を見た。
兄はごく真面目な顔つきで、更に続けた。
「お前にとって私は、調子に乗ってる人みたいだし。調子に乗った人に助けられても、後味悪いだけでしょ」
「そ、そんなこと言ってないじゃないか。俺はただ、お仕置きのやり方を変えて欲しかっただけで……」
「そんな要望をする権利はお前にないの。お仕置きされる側が、お仕置きの種類を選べるわけないでしょ。そういうところも『甘ったれ』だって言ってるんだよ」
「だけど……あの……。さすがに『助けない』ってのは、冗談だよな……?」
「……この期に及んで、まだそういうこと言えるんだ? ここまでくると、育て方を間違えたかなって気にもなってくる」
心底呆れたように、兄が溜息をついた。
話すのも無駄というかのように、くるりと背を向けてしまう。
「とにかく、そういうことだから。もしお前がどこかでやらかしたら、遺体だけは回収してあげるよ」
「えっ!? ちょ、ちょっと兄上……!」
追い縋ろうと思ったのだが、目玉焼きとベーコンが焦げた臭いがして慌てて火を消した。案の定、フライパンは焦げかけており食材もやや炭化していた。
仕方なく、失敗した目玉焼きとベーコンを皿に盛り、トーストも一緒に並べる。
――やっちゃった……。あれ、絶対怒ってたよな……。
余計なことを言うんじゃなかった。
一晩中あんなところに閉じ込められて気が立っていたのもあるし、頭に栄養が足りなくて言うべき台詞をちゃんとチョイスできていなかったのもある。
結果として兄を更に怒らせてしまったのだから、世話はない。
黙っていればこれで終わりになったのに……「もう助けない」みたいな最後通告まで受けてしまったし……。
――だけど、いくら何でも「助けない」はないよな……? 口ではああ言っても、結局ギリギリのところで助けちゃうのが兄上だし……。
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