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第89話

 自惚れでも何でもなく事実として、自分は兄に愛されている。  だから過剰に心配されるし、時には厳しいことも言われるし、欲望をぶつけられることもある。  だけど何度自分がドジを踏んでも、なんだかんだ手を差し伸べてくれるし、今度こそ愛想を尽かされたと思っても、結局許してくれる。  口では「助けない」と言っても、本能で身体が動いてしまう……それが兄・フレインだ。  それをわかりきっているから、アクセルも「兄上が助けてくれる」と信じてしまうのである。  ――ま、そういうところなんだけどな……俺が「甘ったれ」って言われるのは……。  つい兄に甘えてしまうのは、アクセルの悪い癖だ。最後の最後は兄上が何とかしてくれる……と無意識に思ってしまうから、いつまで経っても危機意識が育たないのだろう。  ただ、これに関しては幼い頃からずーっとそうして育てられてきたせいもあり、今更意識をガラッと変えるのは難しい。もちろん自分自身で注意できるところはするが、それ以外の不可抗力はどうしようもない。 「……はあ、もう」  だんだん頭がぐちゃぐちゃになってきて、アクセルは焦げたベーコンエッグをテーブルに持って行った。そしてドスン、と椅子に腰掛け、黙々と朝食を平らげた。焼き加減を失敗したからか、いつもよりだいぶ苦かった。  ――まあ、これ以上考えても仕方がないよな。もう少し時間が経てば、兄上も冷静になるだろ……多分。  今までさんざんいろんなことがあったのだ。こんなことで、たった一人の弟を見捨てるなんてあり得ない。そんなことするくらいなら、もっと前から愛想を尽かされている。  しばらくは険悪な空気になるだろうが、兄弟喧嘩した後はいつもこんな感じだし……気にしてこっちから頭を下げる必要もないだろう。  別に俺は、そこまで悪いことしてないし……。  そんなことを考えながら、アクセルは黙って食事をした。いろんな意味であまり美味しくなかったが、仕方がない。  ササッと食器を洗い、固まった身体を解すためにリビングでストレッチを行う。  一晩中変な姿勢で立ちっぱなしだったから、太もものみならず腰や背中がバキバキになっていた。  ストレッチをしたら程よい眠気が襲ってきたので、アクセルは寝室に向かった。  自分のベッドに入ったら秒で寝入ってしまい、そのまま夕方まで爆睡してしまった。

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