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第94話※

 ――さすがに重いか……!  一刀両断にしたはいいが、した直後にわずかに腕が痺れた。  ヴァルハラにいる大男は、いわゆる肉の塊である。  硬い筋肉だから鋭い刃物でも斬りづらいし、正しい方向に力を加えても相当な腕力が必要になる。ましてや胴体ともなると太いし、内臓や骨も含まれているので更に力が必要となるのだ。  こうなってくると刃こぼれも気になってくるし、べっとりついた血のりも落としたくなるし、勢いのまま胴体を斬ったのは失敗だったかもしれない。  ――いや、できるところまで戦おう。それでもし力が及ばなかったら、潔く自害しよう。  なるべく傷つけずに持ち帰らなきゃいけない……と大男は言っていた。  それは逆に言えば、ボロボロの死体になったら持ち帰れないということだ。  ならばできる限り抵抗し、どうしてもダメな時は首を斬って死ぬ。  そうすれば辱められることもないし、兄への義理も立てられる。  本当は死にたくないけど……助力を乞えない以上、どうしようもない時はそうするしかない。  半ば開き直るような気持ちで、アクセルは襲いかかってくる大男たちを斬り伏せていった。  横からの殴打を避け、軽く跳躍しがてら斜めに小太刀を振り上げる。なるべく胴体は切らないようにし、柔らかい首筋を狙って斬っていった。 「ぎえっ!」 「ぐあぁっ!」  それで何名かは倒せたが、半分くらい斬ったところで小太刀の切れ味が明らかに落ちてきた。大量の人を斬ったせいで血のりや皮脂が刃に纏わりつき、いつもの切れ味が出せなくなってくる。 「ぐっ……!」  後ろから殴られ、アクセルは前のめりに転倒した。  すぐさま身体を転がして起き上がったが、立ち上がったのと同時にぐらりとした眩暈が襲ってきた。痛みは感じないものの、ダメージは身体に蓄積し続けるので、ここまでで結構な傷を負っているものと思われる。 「ふー……ふー……」  狂戦士モードの限界も近い。そろそろ集中力も切れそうだ。  ――ここまで、か……。  やっぱり、ここまで多勢に無勢だとどうしようもない。  自分なりに頑張ったつもりだけど、力が足りなかったようだ。 「…………」  アクセルは血に濡れた小太刀を投げ捨て、代わりに隠していた小型ナイフを取り出した。  それをサッと抜き放ち、自分の首元に当てる。  ごめんな、兄上。あなた無しでも何とかできるって証明したかったけど、結局中途半端なまま終わってしまった。  次に目覚めた時はちゃんとお仕置き受けるから……今度は文句言わないから……遺体だけは回収してくれよな……。  そう覚悟を決め、思い切ってナイフを引こうとした時だった。

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