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第95話※
「アクセルさん!」
「っ……!?」
いきなり後ろから呼びかけられ、驚いてナイフが滑りそうになった。
同時に、大男たちの「ぎゃあぁ!」とかいう悲鳴と、肉が潰れる音が聞こえて来る。
――な、なんだ……? 一体何が……。
振り返ってみたら、後ろにいた大男たちがほぼ全員肉塊と化していた。
金髪の男性が片手で巨大な棍棒を振り回し、周りの男たちを次々に薙ぎ払っている。
――え……だ、誰……?
もちろん兄ではないし、知り合いの上位ランカーでもない。アロイス等の友達とも違う。
突然の助太刀は嬉しいが、一体どこの誰なんだろう。あんな肉体派の人物、知り合いにいただろうか。
「ぐげっ……!」
最後の一人の頭を潰したところで、その男性はようやくドスン、と棍棒を地面に突き立てた。かなり重そうだから、恐らく鎧ごと相手を叩き潰すのを目的とした対装甲兵用の鈍器なのだろう。
ヴァルハラの大男でも問答無用で叩き潰せるから、こういう戦いには役立つと思う。
「はあぁ……ヴァルハラってこういう決闘も日常茶飯事なんですね。これじゃ命がいくつあっても足りないでしょう」
「あ、あの……」
「アクセルさん、大丈夫でしたか?」
「えっ……?」
振り返った彼をまじまじと見つめ、それでようやくその正体に気づく。
「まさか、あなた……ノイン、か……?」
「はい、そうです。頑張ってトレーニングしたら、ちょっと強くなりました」
にこりと笑いかけてくるノインの頬には、少し返り血がついている。
「…………」
あまりの衝撃に、アクセルはしばらく二の句が継げなかった。
――いやいや、ちょっとどころじゃないだろ……。なんだよその力……。
思いっきり鈍器を振り回しているし、上腕も以前よりたくましくなっているし、細身でありながらしっかり鍛えられているのがわかる。
というか、アクセルの腕力では彼の持つ鈍器は長時間振り回せないから、単純な腕力だったら兄とどっこいどっこいかもしれない。
顔の造形だけは変わっていないが、控えめな中にも硬い芯のようなものがあって、以前の自信のなさが嘘のようだった。
あまりの大変身っぷりにポカンとしていると、
「うっ……!」
唐突に、全身をとんでもない激痛が襲ってきた。すっかり気が抜けたのか、狂戦士モードが解けてしまったみたいだ。
蓄積したダメージを一気に受け、立っていられなくなってその場に崩れ落ちる。
「あっ、アクセルさん! しっかりしてください!」
「く……」
「えっと、こういう時は泉に行けばいいんでしたっけ? すぐに運んであげますから、もう少し頑張ってくださいね」
ひょいとアクセルを担ぎ、ついでに棍棒も一緒に担いで泉までダッシュしてくれるノイン。
大人一人と棍棒を担いでも平気でダッシュできるところからして、足腰も相当強くなったみたいだ。本当にたくましくなった。
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