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第96話
――なんか、兄上みたいだな……。
いや、別人だってわかってるけど。
だけどピンチの時に助けてくれて、こうして泉まで連れて行ってくれて、背中もたくましくて安心できる。
ここまで強くなるのに、一体どれだけ努力したんだろう。
バルドルの屋敷で働きながら隙間時間でトレーニングをして、アインやドライの迷惑行為にもめげずに、コツコツ頑張って来たに違いない。
すごいな、本当に。俺なんかじゃ足元にも及ばないや……。
「えっ、アクセル!?」
泉に着いた途端、兄の驚いた声が聞こえてくる。
――そういや兄上、今日は泉の見張り当番だったんだな……。
別人みたいになったノインに運び込まれた自分を見たら、どう思うだろう。
後でちゃんと説明するつもりだけど、変な誤解はしないで欲しい。
「失礼します」
と、ノインはアクセルを背負ったまま縁からジャンプし、ザバーンと泉に飛び込んだ。
全身が水に沈められ、ぶくぶくと泡が纏わりついた後、ゆっくりと上昇する。
水面に顔が出て、ようやく息ができるようになった時、兄・フレインが泳いで近付いてきた。
「ちょっと、これは一体どういうこと? 何があったの?」
「ああ、フレインさん……。アクセルさんが複数の大男に襲われていたので、助太刀していたんですよ」
説明がてら、ノインが背中からこちらを下ろしてくれる。そして丁重に兄に預けた。
兄はアクセルの身体を抱き留めながら、やや眉を顰めた。
「助太刀って……きみ、ノインくんだよね? そんなことできるようになったわけ?」
「ええ、以前より少し強くなったので……。チラシを置きに行った先であんな大乱闘が起きているなんて思わなくて、びっくりしちゃいました」
「でもそれって……つまりノインくんが助太刀に入る前は、アクセルは一人で戦っていたってことだよね? 見回り当番中なのに、緊急呼び出し用の鈴も使ってなかったってこと?」
「はあ。緊急呼び出し用の鈴というのが何なのか、僕にはよくわからないのですが……」
ノインでは埒が明かないと思ったのか、兄はこちらの服のポケットを探り始めた。
案の定、中から未使用の緊急呼び出し用の鈴が出てきて、アクセルは一気にバツが悪くなった。
「ちょっと! 何でポケットに入ったままなの!? そういう時こそ使わなきゃダメじゃないか!」
「ごめん……今度ばかりは一人で何とかしようと思って」
「だから何で!?」
「兄上、『もう助けない』って言ってたから……」
掠れた声でそう答えたら、兄は愕然として固まってしまった。
少し咳き込みながら、アクセルは続けた。
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