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第97話

「……わかってるんだ。俺が甘ったれなのは、兄上が助けてくれるって無意識に思ってるからだって。兄上もそれに呆れて、『もう助けない』って言ったんだろ? だから、今度こそ一人だけで何とかしようって……兄上に頼ることなくこの場を切り抜けようって……そう思ったんだ……」 「アクセル……」 「遺体だけは回収してくれるって言ってたから、力が及ばなかったら潔く自害しようと思ってたけど……たまたま、タイミングよくノインが助太刀してくれて……。それで、何とか死なずに済んだ……。ノインが来てくれなかったら、俺……今頃ナイフで首切って死んでたよ」 「…………」  兄が、呆気にとられたようにこちらを見た。  複雑な感情が入り乱れているようで、青い目の奥がゆらゆら揺れている。  やがて兄は、呟くように言った。 「……だからって、鈴を使わなかったのはいただけないよ。私じゃなくても、駆け付けてくれる人は他にもいたはずだ。同じ見回り当番の仲間が来てくれる可能性もあった。助けを呼ばなかったのは、どう考えても間違ってる」 「そうかもしれないな……。でもあの時は、『一人で何とかしなくちゃ』ってことしか考えられなくて……。助けを呼ぶって選択肢は、最初から除外してたんだ。死んでも遺体を回収してくれるなら、何とかなると思っ……ゲホッ、ゲホッ」  泉の水が気管に入り、大きく咳き込む。咳き込んだら、背中や腹部が地味に痛んだ。もしかしたら、内臓のどこかが損傷しているのかもしれない。  切り傷だったら早めに治るのだが、身体の内側だと完治まで時間がかかるので、いっそのこと死んで棺に入った方が早かったかも……などと考えかけてしまった。 「アクセルさんとフレインさんの間に、何があったか知りませんけど……」  ここでノインが、少し口を挟んできた。 「僕としてはその、緊急呼び出し用の鈴は使うべきだったと思いますし、フレインさんも助けに行くべきだったと思います。せっかくの兄弟なのに、変な意地の張り合いをしていてはもったいないですよ」 「い、いや……意地の張り合いじゃなくて、俺の危機意識があまりに低いから兄上も昔から呆れてて……」 「それはそれ、これはこれです。困った時は助けを求めてもいいし、そうあるべきだと思います。戦士(エインヘリヤル)の皆さんは、死んでも復活できたり大怪我してもすぐ回復できたりするから、何かあった時の選択肢が『命懸け』になりがちなんですよ」 「いやでも、呼び出し用の鈴を使わなかったのは俺だし。それ使わなかったら、兄上だって俺が今どこで何してるのか、気付きようがないし。だから今回は、兄上に非はないん……」 「それは、フレインさんが事前に『もう助けない』って言ったからでしょう? だからアクセルさんも、鈴を使うのをやめたんじゃないんですか?」 「そっ……」

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