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第103話
「いえ、それが……ドライ先輩は、ホズ様が帰ってきてしばらくしたらクビを切られちゃいまして」
「えっ、クビ?」
「ええ。ホズ様がいらっしゃるなら下働きは二人で十分ですし、それなら誰を削るかって話になった時にホズ様がドライ先輩を……」
「そ、そうなのか……」
意外な展開だ……と一瞬思いかけたものの、妥当な判断だと思い直す。
――そもそもホズ様、ドライみたいな「やる気のある無能」、嫌いそうだしな……。
バルドルはおおらかなので下働きのやらかしも軽く注意するだけだが、ホズはそうはいかない。自他共に厳しいので、何度も同じやらかしをしている人は「何故改善されないんだ」と正論で詰めてくる。
それに加えドライは仕事ができないのを他人のせいにするところがあったから、改善の余地が見込めないとして解雇されるのは当然だ。
「だけどドライ先輩、その時も相当ごねましてね……。『ボクがクビになるのはお前のせいだぞ!』って、かなり責められました」
「え、まだそんなこと言ってたのか? あいつ、本当に全っ然反省してないな……」
「うーん……まあ当時は僕も軟弱だったので、そういう風に責められてもあまり反論できなかったんですよね。そんなんだから、もっと付け込まれちゃったんだと思いますけど」
「? もっと付け込まれたって? 他にも何かされたのか?」
そう聞いたら、ノインは少し言いにくそうに視線を泳がせた。
やがて自分が纏っていたバスタオルをちょっと捲り、白い脇腹を見せてきた。
「……えっ? なんだその傷?」
ノインの身体には、何かで刺されたような傷痕が薄く残っていた。
痕の大きさから刃幅は結構太く、一突きされるだけで致命傷になり得ると想像できる。
――ってこの傷、まさか……!
ノインの顔を見たら、彼は苦い顔でこんなことを言った。
「実は、逆上したドライ先輩に刺されちゃいまして……」
「えええっ!? 刺された!? 嘘だろ!?」
「残念ながら本当なんです。すぐにバルドル様が魔法で治してくれたので、大事には至りませんでしたけど」
「いやいや、大事に至らなかったからいいわけじゃないだろ! クビになったからって元同僚を刺すとか、あり得ないぞ!」
猛然と腹が立ってきて、アクセルはバスタオルを外した。
生乾き状態の服に袖を通し、きちんと武器も装備し直す。
「もう許せない! 無能のくせに、調子に乗るのもいい加減にしろよ! 今日という今日は俺が文句を言って来てやる!」
「え、アクセルさん?」
「ドライは今どこにいるんだ? 家は知ってるんだろ?」
「いえ、もういませんよ。ホズ様がクビを切ったって言ったでしょう?」
「……えっ?」
ポカンとノインを見返し、しばらく経った後、ようやくその意味に気づく。
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