107 / 110
第107話
「ほら、私とノインくんってそっくりだからさ。一緒にいたらどっちがどっちかわからなくなりそうかなと」
「いやいや、そんなことないって。兄上は兄上、ノインはノインだよ。なあ?」
「ええ、仰る通りです。少なくともアクセルさんは、僕とフレインさんを間違えることはないと思いますよ」
「……ま、そうなんだろうけどね」
兄はテーブルから立ち上がり、木彫りのアクセルを掴んで元の場所に戻した。
「で? もう夕飯にするのかい?」
「ああ。見回り当番をしたっきり何も食べてなかったからな。ちょっと早めに夕食にして、今日はゆっくり休もう」
「じゃあお前は先にシャワーしておいで。私が夕飯の下準備しておくから」
「ありがとう、そうするよ。……ノインもシャワーするよな?」
「えっ、シャワーもいいんですか? 何から何まですみません」
「あ、せっかくなら庭の露天風呂使うか。ピピの身体も洗ってあげたいし」
ノインと外に出て、檜製の露天風呂に浅くお湯を張る。
足首まで浸かるくらいになったら服を脱ぎ、ピピを呼んで丁寧に身体を洗ってあげた。
白い毛並みは汚れていないようで意外と汚れやすいようで、石鹸をまるまる使っても綺麗な泡になるまでだいぶ手間がかかった。
ノインも手伝ってくれたが、ピピは終始「この人はフレイン? それとも友達?」と不思議そうな顔でノインを見ていた。
ようやく泡が綺麗になり、ピピの全身をもう一度ザーッと洗い流してやる。ついでに汚れたお湯は一度抜き、ササッと浴槽を綺麗にしてからもう一度お湯を張り直した。
「そういえば、あちらのカメさんは洗ってあげなくていいんですか?」
と、ノインがベランダで寝ているカメを指し示す。
カメはお気に入りの寝床で手足と首を引っ込め、甲羅状態のままぐーすか眠っているようだった。
「……あの状態じゃ、洗うことはできないからな。また今度やるよ」
「まあ、甲羅状態を運ぶのでも結構重そうですよね。何キロあるんですか?」
「ちゃんと量ったことはないけど、俺と兄上が二人で乗ってもびくともしないから、それ以上に重いんだろうな」
言われたついでだったので、アクセルはタオルを固く絞ってカメの甲羅を拭いてやった。
甲羅を拭かれていても、カメは我関せずとぐーぐー眠っている。呑気そうな鼾 が甲羅の中から聞こえてきていた。
――なんかいいよな、カメは細かい悩みとか全然なさそうだ。
長寿ゆえの達観なのか、元々そういう性格なのか。アクセルも少し見習いたくなる。
ともだちにシェアしよう!

