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第110話

 ノインは喜んで玉子焼きを平らげ、メインのイノシシのシチューも「とても美味しいです」と味わってくれた。  夕食を済ませてノインを世界樹(ユグドラシル)のところまで送っていき、また会う約束をしてから家に戻る。  キッチンでは兄が使った食器をせっせと洗っているところだった。 「ただいま、兄上。いろいろやってもらっちゃってごめんな」 「いいさ、どうせ暇だったし。ボーッと過ごしてるのももったいないし、やれることがあるならやっておいた方がいいんだ」 「また暇って……兄上、趣味とかなかったっけ?」 「これといって思いつかないなぁ。お前みたいに木彫りとかできればいいんだけど、私の場合は途中で飽きちゃう気がして」 「だったら友達と遊びに行ってもいいんだぞ? わざわざ一人で留守番していなくても……」  そう言いかけたら、兄はジロリとこちらを睨んできた。ちょっと肝が冷えた。 「……お前がそれを言うわけ?」 「えっ……?」 「お前が『嫌だ』っていうから、一人の時は誰とも遊ばないようにしてるんじゃないか。今更何言ってるの?」 「えっ!? い、いや、そうは言ってないぞ? 大勢と遊ぶなら構わないんだ。俺が気にしてるのは、一対一でジーク様と遊ぶことだけで……」 「そんなの証明できる? 例えグループで遊びに行っていたとしても、その最中にジークと二人きりになっちゃうかもしれない。そういう線引きが曖昧だから、遊びに行かないようにしてるのに」 「それはそうだけど、そこまで禁止してたらキリがないじゃないか。それに俺、そうやって不可抗力で二人きりになっちゃった場合は『浮気だ』なんて思わないよ」 「……とか言って、後々ジークと二人きりになった瞬間があったって知ったら、気にしちゃうでしょ。お前はそういう子だもん」 「う……」 「だから一人で留守番してるのにさ。お前はノインくんっていう私そっくりのお友達と遊びに行った上に、そういう発言までするんだ? ああ、そうですか……」  怒気を孕んだ呆れ声を出されて、アクセルは冷や汗をかいた。  軽率なことを言ってしまったことに気づき、慌てて謝罪する。 「ご、ごめん……そんなつもりじゃなかったんだ。兄上が暇を持て余してるようだったから、何かいい暇潰し方法はないかと思っただけで……」 「お前に言われなくても、いろいろ考えてるつもりだよ。さっきは木彫りのお前に話しかけてみたけど、お前が変な反応するからやめた」 「う……ええと、じゃあ、図書館で本を借りてくるとか……」 「それもとっくにやってます。お前が思いつくようなことは既に試してるから、いちいち提案してこないで。ムカつくから」 「……すみません……」  しゅん……と肩を落とす。  何を言っても逆効果になってしまう気がして、仕方なく口を閉ざした。

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