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第111話
――なんか最近、兄上に対していろいろ上手くできてない……。以前はこんなことなかったのに……。
やっぱりノインと一緒にいるからだよな……と思う。
ノインと会う時は「たまにしか会えないから」、「せっかくナインが生まれ変わったから」とそちらを優先してしまい、兄のことがついおざなりになってしまう。そのこと自体は自覚しているし、兄に対して申し訳ないとも思っている。
とはいえ、毎日顔を合わせている兄と、その時にしか会えないノイン、どちらを優先するかといったら――そこはさすがに「ノインの方」と答えるだろう。兄もそれをわかっているから「いってらっしゃい」と送り出してくれるのだし、一緒に帰ってきて風呂に入って夕飯を食べても何も言わない。
ただ――。
――もし俺が兄上の立場だったら、俺のやってることは完全に浮気に見えるだろうな……。
決して浮気ではない。
ノインはあくまで友達だから、それ以上の存在にはならない。例え兄とそっくりでも、兄と間違えることはないし、絶対に変な下心も抱かない。
……と、アクセルは思っているのだが、それはアクセルが心の中で思っているだけだから、第三者に証明はできない。疑われても「浮気じゃない」と主張するしかなく、どこまでも平行線を辿ってしまう。
だからといって、ノインとの友達付き合いをやめればいいのかと言われたらそれもまた違うし……一体どうすればいいか……。
「……もうやめよう。こんなくだらないことで喧嘩したくない」
深い溜息をつき、兄が言った。
「お前との喧嘩は変に拗 れるからね。私のことはいいから、お前はこれからも鍛錬頑張りなさい」
「は、はひ……」
「それじゃ、私はシャワー浴びてくるから」
食器を片付け、浴室に向かってしまう兄。
脱衣所のドアを閉められ、アクセルはそっと俯いた。
――兄上……。
本当は「明日狩りにでも行かないか」と誘いたかったのだが、そんな雰囲気ではなくなってしまった。
それもこれも、自分が余計なことを言ったせいだ。数分前の自分を殴りたい。
とぼとぼとキッチンまで引き返し、せめてものお詫びも兼ねてホットミルクを作った。
完成したミルクをそれぞれのマグカップに注ぎ、リビングに持って行っておとなしく待つ。
が、今日に限って兄はかなりの長風呂で、出てきた頃にはミルクはすっかり冷めてしまっていた。
「あれ、ミルク作ってくれたの?」
髪を拭きながらやってきた兄に、アクセルは慌てて言う。
「あ、ああ……。でも冷めちゃったから、もう一度温め直して……」
「いや、そのままでいいよ。風呂上がりには常温くらいがちょうどいい」
そう言って兄は、自分の分のミルクを一気に飲み干してしまった。
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