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第3話 園児美月。

 極道一家の長男に生まれたからこそ、美月にごく一般の世間を学ばせ経験値を積ませたい、と、そう思った美剣は美月が四歳になる年に幼稚園へ通わせることにした。 「いいか、美月。一般人(カタギ)に迷惑をかけるなよ」  今まで大勢の大人の中で生活していた子供にいきなり同世代と仲良くさせようとするのだ。  上手くいくはずもなく美月は孤立した。  しかも子供は自分と違う異質さを相手に感じた場合、理解しようとはせず排除するものだ。  それが『いじめ』だ。  同世代の子供は自分を受け入れてくれることはないため、美月の周りを囲むのは幼稚園の先生になる。  イコール、他の子供からへの『いじめ』はエスカレートした。  同性は仲間外れにし、異性は可愛い美月をライバル視するようになっていった。  その中で唯一美月を受け入れたのは、愛くるしい美月に好意を寄せる男の子だった。 「みつきちゃん、ぼくとけっこんしてね」  大勢の大人の中で生活していたが故に、並の子供よりも数段頭の回転が早かった美月は、この頃から自分がまわりよりも可愛いことを自覚していたので始末に負えない。 「うん。みつき、けっこんする。だからいっしょうまもってね」  幼稚園の迎えと偽って、誘拐を企てる組員から自分を守るように味方を作っていたのだ。 「美月君、お迎えのお兄さんが来てくれたよ。支度してね」 「みつき、このひとしらない……」 「みつきちゃんをつれていくな!!こいつ、わるいやつだ!!」  若頭派の優しそうな顔をした部下から守ってくれたのは、その男の子ただ一人だった。  しかしそれを美剣が知ると、一般人に迷惑をかけるなと美月を叱ったのだ。  何故自分を守るために男の子を巻き込んではならないのか、美月には理解が出来なかった。  だがその後、守ってくれた男の子と一緒に美月を誘拐しようとする者が現れ、それから一般人を巻き込む軽弾みな言動や行動は控えるようになった。

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