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第5話 実父の死。
腫れ物扱いの小学校ではそれ以外のことはなかったが、美月が十一歳になる丁度一ヶ月前の残暑が残る日に北白川組の内部抗争で組長美雅が若頭大樹の手によって殺された。
美雅が溺愛していた美月に大樹の放った銃弾が迫り、守るように庇ったのだ。
撃たれたところは運悪く心臓の位置で、美雅は即死だった。
美月は美雅が殺される一部始終を見ていた。
美雅が発見されたときの銃弾で流れた血の海の中、美月は泣きじゃくっていた。
その事件が原因で精神の病が美月の心を蝕んだ。
『人間はこんなにもあっさり死ぬのか』と、理解した美月だが、毎晩のように父美雅が銃で撃たれ即死、血の海の中美月は父を起こそうと叫ぶ悪夢を見た。
美月の母もまた最愛の夫を亡くし、自暴自棄になり自殺未遂をはかったため、精神病院に運ばれそのまま入院となってしまった。
だが会長美剣は極道の世界で最強と言われた息子美雅を倒したことで、若頭天野 大樹を見直し北白川組の組長に抜擢した。
それどころか、美剣は美月の母と大樹を再婚させ美月の義父にしたのだ。
何故祖父は息子が死んだのに悲しむどころか、息子を殺した相手を義息として迎え入れたのか、美月には理解が出来なかった。
このとき初めて美月はこの北白川の家を恨み憎んだ。
北白川の家が極道一家ではなかったら美雅は死ぬこともなかった。
美月を育ててくれた美剣の側近や秘書達すら会長 には逆らうことはできなくても、美月の今の状況を考えて涙を流す心優しい者がいたからこそ、立ち上がり前に一歩進むことを決めた。
完璧には立ち直れないが、その人物達がいたからこそ、美月は前を向く決心がつき、ゆっくりでも歩もうと進む勇気が持てた。
けれどこの頃から美月は子供らしからぬ、諦めを持つどこか冷めた性格になっていた。
急に我儘を言うようになったり、気分屋で人を揶揄かう性格になったのはこの事件が原因だった。
子供なりの防衛本能の影響だろうと医師はそう美月を診断した。
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